Jk(a-b-)型はKidd血液型のまれな血液型(表現型)です。日本人では5万に1人程度の検出頻度です。Jk(a-b-)型はポリネシア人(数百人に1人)以外では世界的にもまれな血液型です。通常、まれな血液型の判明は抗体保有者から検出されるか、特異抗体による抗原ス…
Kidd血液型は、第18番染色体長腕に存在するJK遺伝子によってコードされたKidd糖蛋白上に抗原が存在します。JK遺伝子は11個のエキソンから成り、エキソン4の3末端側からエキソン11が蛋白コード領域となります。表現型はJk(a-b+)、Jk(a-b+)、Jk(a+b+)が多型性…
シスAB遺伝子とは、一つの対立遺伝子がAとBの転移酵素活性を有する遺伝子のことで、O遺伝子とヘテロ接合しても表現型はAB型になります(通常はB抗原が弱いAB型)。日本人から検出されるシスAB遺伝子は、A遺伝子がベース構造となっているcisAB01とB遺伝子がベ…
不規則抗体同定において、特異性のある抗体が検出された場合、通常被検者の血液型に基づいて同種抗体又は自己抗体の判断を行っています。しかし、過去3ヶ月以内に赤血球製剤の輸血歴がある場合は、同種赤血球が体内に残っているため、通常実施している血清学…
ヒト血小板上には、HPA抗原及びHLAのクラスI抗原が存在しますが、微量ながらABH抗原も存在します。一部の個体では、血小板上のA、B抗原が高発現したHigh expresserと呼ばれる個体が、集団の中に10%程度存在することが知られています。しかし、同一個体から…
ヒト血小板上には、ヒト血小板特異抗原(HPA)及びHLAクラスI抗原が存在しています。その他にABH抗原(A抗原、B抗原)も存在しますが、その抗原量は赤血球抗原に比べて少ないため、例えば、A型患者(抗B保有)へB型血小板(B抗原)を輸血しても、レアな組み…
輸血歴又は妊娠歴のある患者検体の抗体スクリーニング又は交差適合試験で1本のみ陽性となり、引き続き実施した不規則抗体同定用パネルとは全て陰性となる場合があります。又は1本のみ陽性となり、どの抗体にも合致しない場合があります。このような反応を呈…
ポリエチレングリコール(PEG)を添加した間接抗グログリン試験(PEG-IAT)は、不規則抗体の検出感度に優れているため、試験管法を実施している施設においては、交差適合試験や抗体同定検査に用いられています。しかし、臨床的意義が低い冷式抗体の持ち越し…
多発性骨髄腫は、B細胞系の形質細胞が腫瘍化し、細胞の活性化マーカー(CD38)は強陽性を示すことが知られています。CD38 は内在性膜蛋白で、骨髄腫細胞に著しく発現されています。抗CD38モノクローナル抗体薬は新しい骨髄腫の治療薬として徐々に使用されて…
赤血球膜上の血液型抗原を担う分子構造を大きく分類すると、糖タンパク質、タンパク質、糖脂質(抗原活性は糖鎖)に分類されます。また、抗原分子の中には酵素や還元剤試薬で抗原が破壊される抗原もあります。逆にその性質を活用し、未処理赤血球と処理赤血…
DTT(dithiothreitol)は還元剤試薬であり、200mM濃度で赤血球を処理することによって、分子内にS-S結合を持つ特定の血液型抗原の破壊(主に高頻度抗原に対する抗体の鑑別のため)やDARA(ダラツムマブ)投与患者の抗体検査のために赤血球上のCD38抗原を破壊し…
ABO不適合妊娠の場合やその他の血液型不適合妊娠が疑われ、母親が抗体を保有している際には移行抗体による児への影響を考慮して、母親が保有するIgG性抗体の抗体価を測定する場合があります。IgG性の抗体のみ保有する場合は、通常の間接抗グロブリン試験(以…
赤血球に対する不規則抗体の中には、主にIgM性とIgG性の抗体が存在し、IgM抗体は主に直接凝集反応を示す生理食塩液法(Sal法)で検出される抗体です。一方、IgG抗体は通常直接凝集反応を起こさず、間接抗グロブリン試験(IAT)で検出される抗体です[SL.1、S…
通常、輸血を行う際には、ABO及びRhD血液型検査とともに主な血液型抗原に対する不規則抗体スクリーニング(以下、抗体Scr)が実施されます。抗体Scrで陽性を示した場合は引き続き抗体同定作業を行い、検出された抗体の臨床的意義を考慮し輸血用血液製剤が選…
ABO血液型の判定には、「オモテ検査」と「ウラ検査」がありますが、ウラ検査は被検者血漿(血清)中の抗A、抗B(規則抗体)を検出する検査であり、通常、既知のA1型及びB型赤血球を使用し判定しています。以前は、O型赤血球も同時に検査していましたが、抗体…
これまでの記事において、A2アリルを保有する個体の表現型はO遺伝子とヘテロ接合の場合は、A2アリルの元々の性質が反映された表現型(A2型)になりB遺伝子とヘテロ接合の場合、多くはA2B型であるものの、時々A3B型になる場合もあることをシェアしてきました…
A2型及びA2B型は、現在市販されているモノクローナル抗体では通常のA型及びAB型と判定されるため、通常実施している試験管法では抗A試薬との反応が弱いとはなりません。しかし、試験管法よりも感度が低いスライド法などを実施すると抗A試薬との凝集開始時間…
日本人から検出されるA2型及びA2B型の多くは、主にA201~A205のA2アリルが関与し、A202とA203はO遺伝子とヘテロの場合はA2型に、B遺伝子とヘテロ接合の場合はA2B型又はA3B型になる場合があることを#065の記事でシェアしました。ここでは、A2型に対応する遺…
ABO血液型には抗原量が少ない亜型が存在しますが、遺伝子レベルでは血清学よりもさらに多型性に富み、一つの表現型から複数の対立遺伝子が同定されています。A2(A2B)及びA3(A3B)についても血清学的には同様の表現型であっても複数の対立遺伝子が同定され…
B型の亜型の多くは抗Bと直接凝集を示さないBm型であり、Bm型は日本人から検出される亜型の中で最も多く検出されます。オモテ検査はO型、ウラ検査はB型を示す典型的なオモテ・ウラ不一致の亜型です。一方、B型の混合比が1%程度のB/OキメラにおいてもBmと同様…
ABO血液型には多種の亜型が存在し、その遺伝子背景も様々です。B亜型の中で、B3型はA3型同様に、抗Bと部分凝集を示すことが一つの特徴です。B型ではA型とは異なり、A2型に相当する亜型カテゴリーがないため、B3型といっても比較的強い凝集を示す検体から非常…
ABO血液型には多種の亜型が存在しますが、A3型についての分子生物学的知見は多くありません。また血清学的にA3型と分類する明確な定義が乏しく、加えて対応する遺伝子の違いで赤血球A抗原量や血漿中のA転移酵素活性にはバリエーションが生じ、判定に苦慮する…
ABO血液型の亜型の一つであるA3型は抗Aと部分凝集反応が観察されることが一つの特徴とされています。しかし、部分凝集の程度や血漿中のA転移酵素活性にはバリエーションがあり、一様ではありません。ここでは、赤血球系細胞に特異的な転写制御領域内の変異に…
MNS血液型システムは、現在49抗原が確認されています。そのうち、多型性を示すM、N、S、s(4抗原)の他に、GPAのミスセンス変異によって生じたOr、Osa、MNTDやGYPAとGYPBのハイブリッドで生じたMiltenberger抗原群などの低頻度抗原が多く存在します。これら…
MNS血液型には、多くの低頻度抗原が存在します。このようなMNSバリアントのメカニズムはMN抗原が存在するグリコフォリンA(GPA)とグリコフォリンB(GPB)のハイブリッド分子によって生じています。その代表例がMiltenberger抗原群です。ここでは、MNS血液型…
MNS血液型システム(ISBT002)には多型性のM、N、S、sの他に低頻度抗原、高頻度抗原を合わせて現在49抗原が存在し、Rh血液型システムの55抗原に次いで2番目に抗原数が多い血液型システムです。MNS血液型の49抗原のうち、半数以上が低頻度抗原です。ここでは…
Kx血液型はKx抗原の一種類で構成される19番目の血液型システム(ISBT019)です。Kx抗原はX染色体がコードするXK蛋白上に抗原が存在します。Kx抗原が陰性の赤血球ではKell血液型抗原が減少し、McLeod型(表現型)とも呼ばれています。ここでは、Kell抗原減少…
Lan抗原は赤血球上の高頻度抗原であり、抗原を担う蛋白はABC輸送体ファミリーに属するABCB6に存在しています(JR血液型はABCG2)。ISBT(国際輸血学会)では33番目の血液型システムとして登録されています。Lan-型は世界的にもまれな血液型であり、抗Lanの報…
抗I、抗M、抗P1などの低温反応性のIgM性の不規則抗体を保有している血漿(血清)を用いたABO血液型判定のウラ検査では、ABO型に関係なく凝集し、一見ウラ検査がO型に判定される場合があります。しかし、通常実施しているABOウラ検査や不規則抗体スクリーニン…
P血液型(P1)は1927年にLandsteinerとLevineがヒト赤血球免疫ウサギ血清中の抗体を用いて発見した血液型です。近年P転移酵素,Pk転移酵素を担う遺伝子がクローニングされ、その遺伝的背景が明らかとなりP血液型はP1PK血液型にシステム名が変わりました。一…