通常、直接抗グロブリン試験が陽性で、パネル赤血球や交差適合試験ですべて陽性になる血漿(血清)では、多くの場合、抗赤血球自己抗体(以下、自己抗体)の存在を疑い検査を進めます。自己抗体にマスクされた同種抗体の存在を明らかにするため、過去3ヶ月以…
血漿(血清)に不規則抗体同定用パネル赤血球や交差適合試験で、3+以上に反応する温式自己抗体(以下、自己抗体)が存在する患者さんでは、通常、直接抗グロブリン試験(以下、DAT)も強陽性(3+以上)になっています。このような検体の抗体同定を行う際に…
不規則抗体同定において、同定用パネル赤血球との反応を観察すれば、全ての抗体が同定できるわけではありありません。単一の特異性(抗E、抗Fyb、抗Diaなど)であれば、ある程度同定可能ですが、3種類以上の特異性を有する抗体が複数存在した際にはパネル赤…
直接抗グロブリン試験(以下、DAT)は、赤血球に既に結合している抗体及びγグロブリン等の結合を検出する検査方法です。主な血液型抗原に対する不規則抗体は、自己赤血球の抗原が陰性で、輸血や妊娠などの同種免疫によって産生される抗体であるため、自己赤…
輸血に先立ち、ABO及びRhD血液型と同時に抗体スクリーニングを実施しますが、過去に輸血や妊娠歴のある被検者では、同種抗体を保有している場合があり、抗体スクリーニングで陽性となるケースがあります。その際、3〜4本がセットになった抗体スクリーニング…
不規則抗体スクリーニングは,患者血漿(血清)と供血者赤血球間で行われる交差適合試験(主試験)と比べ、検出感度及び信頼性の点で優れているとされ、可能な限り不規則抗体スクリーニングは交差適合試験に先立って実施すべきであるとされています。そもそも…
寒冷凝集素病などで検出される高力価の抗I(冷式自己抗体)が血清中に存在する場合、自己赤血球のI抗原は陽性のため、自己赤血球にIgM性の抗Iが感作(結合)し、EDTA採血した血液は凝固血のような状態になります。そのような検体から赤血球浮遊液を調製し、A…
抗Iは冷式自己抗体(寒冷凝集素ともいう)で、ABO型に関係なく低温で反応する抗体です。一方、抗HIは赤血球状のH抗原が少ない個体、つまりA型やAB型の個体から多く検出される特徴があります。また、単一特異性抗体で存在する場合もあれば、抗I+抗HIとして存…
通常、輸血前検査ではABO、RhD血液型の他に不規則抗体スクリーニング(以下、抗体SC)を実施し、ABO、Rh血液型に問題がなく、抗体SCが陰性であれば、引き続き被検者とABO同型の血液製剤と交差適合試験を実施し輸血を行っています。時々、O型以外の被検者にお…
間接抗グロブリン試験でパネル赤血球すべてと陽性反応を示し、高頻度抗原に対する抗体が疑われた場合、通常の同種抗体を同定するようにパネル赤血球との反応性だけでは特異性を決定できません。そのため、赤血球側からのアプローチとして抗原タイピングを実…
抗D試薬を用いた間接抗グロブリン試験でD陰性と判定される殆どは、RHD遺伝子の欠損による真のD陰性ですが、東アジア系民族では、抗D試薬と陰性と判定された一部に、D抗原が微量に存在するDEL型という表現型があります。また、国内外でD陰性者へD陰性の赤血球…
DEL表現型は、赤血球上に微量のD抗原が存在しますが、抗D試薬との間接抗グロブリン試験で陰性となるため、通常の検査(D確認検査)ではRhD陰性と判定されます。DEL型の最終判定は抗D試薬を用いた吸着解離試験を行い、解離液から抗Dの特異性を確認された際にD…
RhD抗原は、Rh表現型の違いで赤血球一個あたりの抗原数が異なることが知られています。まれな血液型であるD--のD抗原数が最も多く、20万程度のD抗原数と考えられています(通常の表現型の約10倍程度多い)。そのため、希釈した抗D試薬との反応においても直接…
Rh血液型のCとc、Eとeは対立関係にある抗原のため、レアな表現型(D--やcD-など)を除けば、抗原はホモ接合かヘテロ接合の表現型となります(通常の表現型ではC-,c-やE-,e-はない)。C+,c-のC抗原はC+,c+よりも抗原量が多く、同様にE+,e-はE+,e+よりもE抗原…
Rh血液型は、第一染色体上にあるRHD遺伝子とRHCE遺伝子にコードされ、それぞれの遺伝子によって合成されたRhD蛋白とRhCeEe蛋白は6つの細胞外ドメインを持つ膜貫通蛋白です。赤血球の血液型システムの中でも最も抗原数が多く、多型性に富んだ血液型です。Rh血…
ABO血液型をコードする遺伝子は第9染色体長腕にあり、長さが19.5Kbpで7つのエキソンから構成されています。エキソン6及び7がA,B転移酵素活性に重要な部分で、A遺伝子(ABO*A1.01)とB遺伝子(ABO*B.01)では7箇所の塩基置換があり、そのうち4箇所がアミ…
2022年9月時点で、国際輸血学会(ISBT)に公認された血液型システムは44システムあり、354抗原が44システムのいずれかに属しています。血液型システム(系列)とは、同じ特徴(性質)を持つ血液型のグループであり、ヒト同種抗体で抗原が確認されること、遺…
抗E、抗Dia、抗Fyb、抗Jkaなど日常検査で検出される臨床的意義ある抗体の多くは、主にIgG性抗体であり、LISS-IAT、PEG-IAT及び60分加温-IATなどの間接抗グロブリン試験で検出される抗体です。低力価の弱い抗体では、ポリエチレングリコールを添加したPEG-IAT…
不規則抗体検査において、低温(20℃や4℃)での反応相で強く反応し、37℃相では反応しない抗体を冷式抗体といい、対応抗原が陽性の血液を輸血しても臨床的には無害と考えられています。日常検査で遭遇し、これらの性質を示す抗体には、抗I、抗IH(抗HIともいう…
日本人ではRh系の抗体(抗Eや抗c)の検出頻度が高い背景があります。また、ブロメリン一段法(以下、Bro法)やficin二段法はRh系抗体の検出感度が高く、産生初期の抗体などを検出できるということで、以前から好まれて使用されている背景もあります。しかし…
通常、抗体の強さ(反応)が強い方が臨床的意義は高い(輸血上考慮しないといけない抗体)と考えられます。1+の凝集よりは4+の凝集を示す抗体の方が危険だ、と考えるはずです。従って、凝集強度(反応性)は輸血を考える際には重要です。1+〜3+の凝…
不規則抗体スクリーニング及び同定用パネル赤血球は、主な血液型(Rh、Duffy、Kidd、MNSなど)の抗原がホモ接合型の組み合わせで構成され、低力価の弱い抗体も検出するような工夫がされた不規則抗体検出用の赤血球試薬です。そのため、一部の抗原においては…
通常、まれな血液型(まれな表現型)と呼んでいるのは、赤血球の高頻度抗原が陰性の表現型を言います。つまり、「高頻度抗原が陰性=まれな血液型」となります。現在、国際輸血学会(ISBT)で公認されている血液型は345抗原あり、43システムのいずれかに属し…
通常、赤血球輸血を行う際には、患者とABO及びRhD血液型が同型の血液と交差適合試験を行い、陰性であれば輸血が実施されます。しかし、患者が過去に妊娠歴や輸血歴がある場合には、同種免疫によって赤血球抗原に対する抗体を保有している場合があり、交差適…
ABO血液型判定において、オモテ・ウラ不一致を示す亜型(Bm、A1Bmなど)の際には、抗B試薬を用いた吸着解離試験を行い、赤血球上に微量に存在する抗原(B抗原)を証明します。また、同様に、B型の混合割合が少ない(1%以下)血液型キメラ、例えばB/O(1:99…
抗D試薬を用いて試験管法でRhD判定を行う際には、試験管に抗D試薬を滴下し、その後、被検者の赤血球浮遊液を1滴加えて、よく撹拌後、遠心判定します。殆どの場合、3+〜4+の凝集が観察され、D陽性と判定されます。しかし、w+〜1+程度の凝集の場合は、w…
抗D試薬を用いて試験管法でRhD判定を行う際、抗D試薬と被検者赤血球を混和し、遠心判定すると通常のD陽性は3+以上の凝集が観察されます。凝集反応が陰性又は弱陽性の場合は、引き続き37℃で加温後、間接抗グロブリン試験(D確認試験)を行い最終判定しま…
通常、唾液中には多量のABH型物質が含まれているため、唾液中の型物質を調べることで、ある程度ABO血液型が判定できます。A型の唾液にはAとH、B型の唾液にはBとH、AB型の唾液にはAとBとH、O型の唾液にはH型物質が含まれます。唾液検査は通常、亜型検査の一部…
結論からいうと、赤血球の抗原量と血漿中のA,B転移酵素活性には相関がありません。赤血球の抗原量が多少少ない一部の例においては血漿中の転移酵素活性が若干低下している場合もありますが、基本的には赤血球の抗原量と血漿中の転移酵素活性は相関しません。…
白血病やMDS(骨髄異形成症候群)などの血液疾患で造血幹細胞移植を行った際、患者さんとABO同型ドナーから移植した場合は、移植後ABO血液型に変化はありません。しかし、ABOが異なるドナーから移植した場合には、移植後に赤血球はドナーの血液型に置き換わ…