血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#170:輸血検査のマメ知識(DAT陽性の場合に考えること)

 

 直接抗グロブリン試験(以下、DAT)は、赤血球に既に結合している抗体及びγグロブリン等の結合を検出する検査方法です。主な血液型抗原に対する不規則抗体は、自己赤血球の抗原が陰性で、輸血や妊娠などの同種免疫によって産生される抗体であるため、自己赤血球とは反応しません。従って、血清中の同種抗体によってDATが陽性になることはありません。但し、不規則抗体保有者へ対応抗原が陽性の血液を輸血した際には、輸血後にDATが弱陽性になることもあります(輸血後に抗体が産生された場合も同様)。また、抗体保有の母親から出生した新生児では母親から移行した抗体(移行抗体)によって児のDATが陽性の場合(母親保有抗体に対して児の赤血球抗原が陽性の場合)もあります。こういったレアケースを除けば、通常DATが陽性になるのは、赤血球に対する自己抗体が関与している例が殆どといっても過言ではありません。DATが陽性になった場合に考えなければならないことがいくつかあります。まずは、被検者(患者さん)に溶血所見があるか否かが重要になります。これは赤血球に結合した抗体によって赤血球が破壊されていないかを確認するという意味です。代表的な例は自己免疫性溶血性疾患(AIHA)などの例です。溶血所見があれば、次に確認することは、血漿(血清中)の抗体の有無です。低温で反応する強いIgM性の抗体が存在する寒冷凝集素症(CAD)や37℃加温からの間接抗グロブリン試験で反応するIgG性の温式自己抗体の存在を見極めることで解釈をスムーズにするためです。寒冷凝集素症(CAD)などの場合は、EDTA採血された検体は、凝固血のように固まった状態になりますので、採取された検体の性状を確認することも重要です。溶血所見がなければ、仮にDATが陽性であっても、すぐに赤血球が破壊されることはありませんので、そのようなケースで輸血を考えている場合には、自己抗体にマスクされた同種抗体の存在を見逃さないことが一番重要です。同種抗体を保有するということは、過去に輸血歴や妊娠歴などがあります。こういった患者情報を収集することも解決するためには必要です。また、血清中の抗体スクリーニングが陰性(不規則抗体なし)で、DATのみがw+〜2+程度になる場合もあります。これは弱い自己抗体が産生され始めた時期、又は自己抗体以外のγグロブリン等が赤血球に非特異的に結合した際に観察される現象です。このようなケースでは、被検者(患者)の疾患や投与薬剤を調べて、DATが陽性になる要因を推察します。とくに血液疾患(多発性骨髄腫、白血病、MDS)、膠原病、肝硬変、感染症を伴っている場合は、血清中にM蛋白が多く出現し、その影響でDATが弱陽性になっているケースがあります。従って、DATが陽性の場合には、血清中に抗体が存在するか否かが一つの見極めポイントになります。また、赤血球抗体解離試験を実施し、解離液とパネル赤血球で陽性になるか否かも判断の一つとなります。

 

【Keyword】#DAT陽性 #自己抗体 #γグロブリン

 

【参考Blog】

・#136:ケーススタディー(Episode:36)DAT陽性の原因は自己抗体だけではない(鑑別のための検査方法)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2021/06/22/080150