血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#165:輸血検査のマメ知識(不規則抗体SCのSal法で見極めること)

 

 通常、輸血前検査ではABO、RhD血液型の他に不規則抗体スクリーニング(以下、抗体SC)を実施し、ABO、Rh血液型に問題がなく、抗体SCが陰性であれば、引き続き被検者とABO同型の血液製剤と交差適合試験を実施し輸血を行っています。時々、O型以外の被検者において、ABO血液型判定でウラの反応がO型になり、オモテ・ウラ不一致になるケースや抗体SCにおいて、Sal法のみ陽性となる場合があります。PEGなどを用いた間接抗グロブリン試験(PEG-IAT)を実施した場合は、PEG-IATがw+〜1+程度を示し、輸血の判断に迷うケースもあります。基本的に輸血のみを考慮した際には臨床的意義がある抗体を検出することを第一優先にするため、PEG-IATのみの実施で問題ありませんが、Sal法で反応するような抗体が存在する血漿(血清)では、PEG-IATでw+〜1+程度の凝集に悩まされることもあります。また、ABO判定のウラ検査で余計な反応が出ている場合も血液型判定が出来ず、結局迷路にハマる場合があります。このようなケースの場合は、まずは抗体SC赤血球のSal法の反応性を注意深く観察し、結果を上手に解釈することが大切です。通常SC赤血球は3本〜4本組になっています。観察ポイントは、①全てが一様に反応しているか?、②自己対照赤血球との反応も同様に反応しているか?、③温度を4℃、37℃にした際に、凝集強度はどう変化するか?、④被検者がO型以外の場合は、ABO同型赤血球との反応はどうか?、⑤ブロメリン試薬がある場合は、1滴加えて15分静置後の反応はどうか?、この①〜⑤の反応を観察するだけでもある程度抗体に関する情報が得られます。全て反応している場合は、ABO同型赤血球との反応性から抗I又は抗HIが考えられ、自己対照赤血球との反応から抗Iか、抗HIの鑑別が出来ます。反応温度を振ることで冷式抗体であることを確認出来ます(連銭形成では温度で差がない)。全て陽性ではなく、1本〜2本のみ陽性の場合は、抗M、抗N、抗P1、抗Lea、抗Lebなどを考慮する必要がありますが、ブロメリン試薬を添加することで抗M、抗Nの肯定と否定が出来ます。原因がある程度絞り込んだ後に、ABOウラ検査に影響しない赤血球を選択すればABO判定が可能となります。但し、抗Iによる場合は、吸着除去しなければウラ検査は全て陽性になります。抗体SCでSal法を実施することは、輸血だけを考えた場合は必要ありませんが、ウラ検査に影響が出ているような場合はSal法を実施することで反応している抗体の情報を得ることが出来ます。

 

【Keyword】#低温反応性 #冷式抗体 #オモテ・ウラ不一致

 

【参考Blog】

#010:冷式抗体の性状に関する(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/01/19/083655