抗Iは冷式自己抗体(寒冷凝集素ともいう)で、ABO型に関係なく低温で反応する抗体です。一方、抗HIは赤血球状のH抗原が少ない個体、つまりA型やAB型の個体から多く検出される特徴があります。また、単一特異性抗体で存在する場合もあれば、抗I+抗HIとして存在する場合もあります。抗Iは、ABO型と無関係に反応するため、ウラ検査ではA、B、O型赤血球全てに同様の反応が観察されます。一方、抗HIは、抗Iの一種ですが、O型赤血球と強い反応を示す抗体です。どちらの抗体もi型赤血球や臍帯赤血球(cord-i)とは反応しない特徴があります。時々、抗体SCの反応が陰性にも関わらず、ABOウラ検査の赤血球とのみ陽性になる場合があります。例えば、A型の場合は、ウラ検査でA赤血球と2+、B型赤血球と4+の反応です。B赤血球との反応は規則抗体の抗Bですが、A型赤血球と反応しているのは一体何?ということになります。抗体SC赤血球は主な血液型抗原が陽性赤血球の組み合わせになっていますので、陰性であるということは一般的に室温レベルで検出される抗M、抗N、抗P1、抗Lea、抗Lebなどの抗体ではないということです。このようなケースで(教科書的に)一番考えるのは抗A1の存在だと思います。被検者がA2型やA3型で抗A1を保有?と考えがちですが、仮にA2型であってもオモテ検査で4+の場合に室温レベルで抗A1が検出される例は殆どありません。このようなケースの殆どは抗AIによる反応です。確認のためには複数例のA型赤血球と2+〜3+程度の反応が観察されること、また、1+程度の場合は、低温(4℃)で反応が増強すること、可能であれば、臍帯赤血球(cord-i)との反応を観察し、陰性であれば、ほぼ抗AIの可能性が高いと考えます(自己赤血球とも反応することが前提です)。どうしても抗A1と区別したい場合は、A型分泌型唾液によって中和されるか否かを観察することです。抗A1は抗体が中和されますが、抗AIはされません(抗Iの仲間なので)。同様に抗BIの場合はB型赤血球と反応が観察されます。A型やB型の被検者において、抗体SCが陰性で交差適合試験の主試験(Sal法)で凝集が観察された場合は、抗AIや抗BIを疑う必要があります。
【Keyword】#冷式抗体 #抗AI、抗BI #オモテ・ウラ不一致
【参考Blog】
#011:冷式抗体保有時のABOウラ検査の(はてな?)
https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/01/21/203910
#029:抗I、抗HI保有者のABOウラ検査の(はてな?)
https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/03/08/062135