血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#151:輸血検査のQ&A(まれな血液型とは?)

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 通常、まれな血液型(まれな表現型)と呼んでいるのは、赤血球の高頻度抗原が陰性の表現型を言います。つまり、「高頻度抗原が陰性=まれな血液型」となります。現在、国際輸血学会(ISBT)で公認されている血液型は345抗原あり、43システムのいずれかに属しています(システムというのは同じ遺伝子によってコードされた分子上に存在する血液型グループのことです。例えば、Rhシステムがあり、その中にD,C,c,E,eといった抗原が存在しています)。345抗原のうち約52%が高頻度抗原です。日本人からこれまで検出されているまれな血液型の一覧を下に示しましたが、検出頻度が比較的高い表現型をII群、検出頻度が非常に低い表現型をI群として区分しています。

 例えば、II群のFy(a-b+)は1/100人、S+s-は1/300人、Di(a+b-)は1/500人、Jr(a-)は1/1,700〜2,000人の頻度で検出されます。一方、I群のまれな血液型であるBombay型は1/30万、En(a-)、p、PKなども非常に検出頻度が低く数十万人に1人程度しか検出されません。Fy(a-b-)、やJk(a-b-)なども日本人から検出されることが少ないまれな血液型です。D- -、Koなどは比較的検出されますが、それでも数万人(5万〜10万人)に1人程度の頻度となります。Bombayの人が保有する抗H、pが保有する抗PP1Pkや抗P、Jk(a-b-)が保有する抗Jk3、D- -が保有する抗Rh17、Koが保有する抗Kuなどは全て臨床的に意義がある抗体のため、輸血の際には同じまれな血液型の血液が必要になります。一方、抗JMH、抗KANNO、抗Ch/Rgなどは、高頻度抗原に対する抗体(保有者はまれな血液型)ですが、臨床的意義が低い抗体のため、抗体が検出されてもランダム血液で対応しています。このようにまれな血液型の個体の全ての人が同じまれな血液型の血液がないと輸血できないというわけではなく、その抗体特異性(抗体の性質)によって輸血の選択が異なります。

 ABO亜型やRh亜型も確かに数万人レベルの検出頻度になりますが、これらをまれな血液型とは呼びません。例えば、ABO亜型(例えば、A3、Ax、Am、Aelなど)であっても、O型の赤血球で輸血は対応可能です。また、Rh亜型においてもD陰性で対応が可能です。

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【参考ブログ】

・#018:不規則抗体の絞り込みの(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/07/053851

 

・#022:D- -と抗Rh17の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/15/085505

 

・#055:試験管溶血も観察される抗P、抗PP1PKの(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/05/25/051813