Rh血液型は、第一染色体上にあるRHD遺伝子とRHCE遺伝子にコードされ、それぞれの遺伝子によって合成されたRhD蛋白とRhCeEe蛋白は6つの細胞外ドメインを持つ膜貫通蛋白です。赤血球の血液型システムの中でも最も抗原数が多く、多型性に富んだ血液型です。Rh血液型では、Cとc、Eとeのような対立関係の抗原の他に、複合抗原と呼ばれる抗原が存在します。これは、同じRHCE遺伝子上に抗原をコードする遺伝子が存在した赤血球が抗原陽性となり、例えば、RH6(f抗原)ではcとeの両方が同じ遺伝子上にあるrr(dce/dce)やR1r(DCe/dce)でf抗原が陽性となります。Rh7(Ce抗原)はDCeやdCeの遺伝子を持つ赤血球でCe抗原が陽性となります。他にもRh22(CE抗原:DCEやdCEの遺伝子タイプ)、Rh27(cE抗原:DcEやdcEの遺伝子タイプ)などが存在します。例えば、R1R1型(D+C+E-c-e+)の被検者(患者さん)がR2R2型(D+C-E+c+e−)やR2r(D+C-E+c+e+)赤血球と反応し、一見抗E+抗cに見える場合、精査するとRzR1型(D+C+E+c-e+)やrr型(D-C-E-c+e+)とは反応せず、Eとc抗原が同じ遺伝子上(DcE又はdcE)に存在すると考えられる赤血球としか反応しない場合があります。このような例は抗cE(複合抗原に対する抗体)の可能性があるということです。
Rh表現型は、レアな例を除けば概ね8つの表現型になります。日本人の頻度は表1の通りであり、E-型が50%存在するため、日本人では抗Eの検出率が高いのはこうした背景があります(E-個体にランダムな血液を輸血すると、確率的に2本中 1本はE+が輸血される)。一方、R2R2型(C-、e-)は10%程度しか存在しないため同種抗体の抗Cや抗eの抗体を保有する頻度は低く、逆に自己抗体として抗Dや抗eの検出率が高いのは日本人のRh表現型の背景によるものと考えられます
(表1)
Rh表現型 |
日本人の頻度 |
Rh抗原 |
R1R1 |
43% |
D+C+E-c-e+ |
R2R2 |
9% |
D+C-E+c+e- |
R1R2 |
37% |
D+C+E+c+e+ |
R1r |
7% |
D+C+E-c+e+ |
R2r |
3% |
D+C-E+c+e+ |
Ror |
0.1% |
D+C-E-c+e+ |
RzR1 |
0.5% |
D+C+E+c-e+ |
RzR2 |
0.3% |
D+C+E+c+e- |
【Keyword】#Rh表現型 #Rh複合抗原
【参考Blog】
#019:Rh蛋白の複合抗原に対する抗体の(はてな?)
https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/09/063353
#031:自己抗体の血液型特異性の(はてな?)
https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/03/14/062817