血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#159:輸血検査のマメ知識(Rh表現型の頻度及び複合抗原について)

 

 Rh血液型は、第一染色体上にあるRHD遺伝子とRHCE遺伝子にコードされ、それぞれの遺伝子によって合成されたRhD蛋白とRhCeEe蛋白は6つの細胞外ドメインを持つ膜貫通蛋白です。赤血球の血液型システムの中でも最も抗原数が多く、多型性に富んだ血液型です。Rh血液型では、Cとc、Eとeのような対立関係の抗原の他に、複合抗原と呼ばれる抗原が存在します。これは、同じRHCE遺伝子上に抗原をコードする遺伝子が存在した赤血球が抗原陽性となり、例えば、RH6(f抗原)ではcとeの両方が同じ遺伝子上にあるrr(dce/dce)やR1r(DCe/dce)でf抗原が陽性となります。Rh7(Ce抗原)はDCedCeの遺伝子を持つ赤血球でCe抗原が陽性となります。他にもRh22(CE抗原:DCEdCEの遺伝子タイプ)、Rh27(cE抗原:DcEdcEの遺伝子タイプ)などが存在します。例えば、R1R1型(D+C+E-c-e+)の被検者(患者さん)がR2R2型(D+C-E+c+e−)やR2r(D+C-E+c+e+)赤血球と反応し、一見抗E+抗cに見える場合、精査するとRzR1型(D+C+E+c-e+)やrr型(D-C-E-c+e+)とは反応せず、Eとc抗原が同じ遺伝子上(DcE又はdcE)に存在すると考えられる赤血球としか反応しない場合があります。このような例は抗cE(複合抗原に対する抗体)の可能性があるということです。

 Rh表現型は、レアな例を除けば概ね8つの表現型になります。日本人の頻度は表1の通りであり、E-型が50%存在するため、日本人では抗Eの検出率が高いのはこうした背景があります(E-個体にランダムな血液を輸血すると、確率的に2本中 1本はE+が輸血される)。一方、R2R2型(C-、e-)は10%程度しか存在しないため同種抗体の抗Cや抗eの抗体を保有する頻度は低く、逆に自己抗体として抗Dや抗eの検出率が高いのは日本人のRh表現型の背景によるものと考えられます

(表1)

Rh表現型

日本人の頻度

Rh抗原

R1R1

43%

D+C+E-c-e+

R2R2

9%

D+C-E+c+e-

R1R2

37%

D+C+E+c+e+

R1r

7%

D+C+E-c+e+

R2r

3%

D+C-E+c+e+

Ror

0.1%

D+C-E-c+e+

RzR1

0.5%

D+C+E+c-e+

RzR2

0.3%

D+C+E+c+e-

 

【Keyword】#Rh表現型 #Rh複合抗原

 

【参考Blog】

#019:Rh蛋白の複合抗原に対する抗体の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/09/063353

 

#031:自己抗体の血液型特異性の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/03/14/062817