血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#152:輸血検査のQ&A(不規則抗体検査を実施していれば、交差適合試験は省略可能か?)

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 不規則抗体スクリーニング及び同定用パネル赤血球は、主な血液型(Rh、Duffy、Kidd、MNSなど)の抗原がホモ接合型の組み合わせで構成され、低力価の弱い抗体も検出するような工夫がされた不規則抗体検出用の赤血球試薬です。そのため、一部の抗原においては交差適合試験よりも検出感度が高い(ホモ接合型の抗原で抗体の有無を確認できるため)のは事実です。しかし、この赤血球試薬で検出できるのは、主な血液型抗原に対する抗体のみであることも知っておく必要があります。例えば、患者さんと輸血する赤血球製剤のABO適合性は確認できません。また、患者さんが保有する低頻度抗原に対する抗体も不規則抗体スクリーニング及び同定用パネル赤血球では確認できません。従って、輸血前検査では、不規則抗体検査と同時に必ず交差適合試験は実施する必要があります。

 交差適合試験を行うメリットはもう一つあります。例えば、A型の患者さんが緊急的に輸血することになり、急遽抗体スクリーニング及び同定用パネルを実施したところ、全て陽性(自己対照陰性)になったと仮定します。輸血検査のベテランであれば知識も多いため、おそらく、自己対照赤血球が陰性であることから自己抗体の可能性は低く、同種抗体である高頻度抗原に対する抗体や複数の抗体を推測し、この状況下では直ぐに輸血はできないと判断すると思います。このようなケースでは、患者さんがA型なのでABO同型(A型)の赤血球製剤のセグメント(数本)を使って、交差適合試験(主試験)を実施してみることです。仮に高頻度抗原に対する抗体や複数抗体であれば、間違いなく数本実施したセグメントでも陽性となるはずです。しかし、交差適合試験では陰性になることがしばしばあります。これは、抗HI(冷式自己抗体)によるもので、O型赤血球と強く反応する抗Iの一種です。抗HIをO型赤血球のパネル赤血球などだけで解決しようとすると、糖鎖抗原であることから多少凝集に強弱もでてくることから迷路にハマります。パネル赤血球で全て陽性の場合、O型以外の患者さんの際には、ABO同型の赤血球と反応を観察することは解決の糸口になることがあります。こういった観点からも不規則抗体検査と同時に必ず交差適合試験を実施する意味があります。

 

【参考ブログ】

・#014:交差適合試験の必要性の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/01/064241

 

・#010:冷式抗体の性状の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/01/19/083655

 

・#017:低頻度抗原に対する抗体の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/05/152216