血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#162:輸血検査のマメ知識(DEL型のRh表現型について)

 

 DEL表現型は、赤血球上に微量のD抗原が存在しますが、抗D試薬との間接抗グロブリン試験で陰性となるため、通常の検査(D確認検査)ではRhD陰性と判定されます。DEL型の最終判定は抗D試薬を用いた吸着解離試験を行い、解離液から抗Dの特異性を確認された際にDEL型と決定します。日本人のDEL型の頻度は、RhD陰性の約10%程度と考えられてきました。また、DELはRhC抗原と関連があることも以前から報告されていました。そこで、2,754例のRhD陰性検体について実際に調べてみました。RhD陰性検体をすべて抗D試薬で吸着解離するのは手間と時間を要します。そこで、スクリーニング検査(ふるい分け検査)として、RHD遺伝子(エキソン10)の有無を調べるPCR-SSP法を行いD遺伝子の有無について調べた結果、2,754例中378例(13.7%)がD/dでありD遺伝子を保有していることがわかりました(D遺伝子を保有している=DELの可能性が高い)。次に378例について抗D試薬を用いて吸着解離試験を実施した結果、解離液から抗Dの特異性が確認された検体が240例でした。これがDEL型となります。遺伝子検査でD/dと判定されDELではなかった138例は精査の結果、D遺伝子の一部(エキソン10を含む)しか保有せず、D蛋白が発現していないことからD陰性と考えられました。

 240例のDEL型の96.7%がRHD遺伝子の1227番塩基の一塩基置換(c.1227G>A)を有するRHD*DEL1アリル(アジアタイプ)と判明しました。また、240例のDEL型検体は、表1に示すように、すべてRhC抗原が陽性でした。C抗原が陰性からはDELは検出されませんでした。RhD陰性の表現型頻度は、概ねr”rが36%、r rが26%、r”r”が19%、r’rが9%、r’r”が8%、r’r’が1.7%程度と推測されています。この中でC抗原陽性の表現型はr’r(9%)、r’r”(8%)、r’r’(1.7%)で、約19%程度になり、この約半数がDEL型ということになります。従って、結論としてはRhD陰性の約2割がC抗原陽性で、その半数(RhD陰性の1割)がDEL型ということです。

 

Rh表現型

抗原

例数

D陰性数

DEL数(%)

r’r

D-C+E-c+e+

306

187

119(38.9%)

r’r”

D-C+E+c+e+

231

134

97(42.0%)

r’r’

D-C+E-c-e+

31

8

 23(74.2%)

r’ry

D-C+E+c-e+

2

2

  0(0.0%)

r”ry

D-C+E+c+e-

28

27

  1(3.6%)

ry ry

D-C+E+c-e-

1

1

0(0.0%)

r”r

D-C-E+c-e+

1,130

1,130

0(0.0%)

r”r”

D-C-E+c+e-

380

380

0(0.0%)

r r

D-C-E-c+e+

645

645

0(0.0%)

 

合計

2,754

2,514

240(8.7%)

 

【Keyword】#DEL表現型 #DEL遺伝子

 

【参考Blog】

#129:ケーススタディー(Episode:29)抗Dと微細な凝集が観察された際に考えること

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2021/05/03/054156