DEL表現型は、赤血球上に微量のD抗原が存在しますが、抗D試薬との間接抗グロブリン試験で陰性となるため、通常の検査(D確認検査)ではRhD陰性と判定されます。DEL型の最終判定は抗D試薬を用いた吸着解離試験を行い、解離液から抗Dの特異性を確認された際にDEL型と決定します。日本人のDEL型の頻度は、RhD陰性の約10%程度と考えられてきました。また、DELはRhC抗原と関連があることも以前から報告されていました。そこで、2,754例のRhD陰性検体について実際に調べてみました。RhD陰性検体をすべて抗D試薬で吸着解離するのは手間と時間を要します。そこで、スクリーニング検査(ふるい分け検査)として、RHD遺伝子(エキソン10)の有無を調べるPCR-SSP法を行いD遺伝子の有無について調べた結果、2,754例中378例(13.7%)がD/dでありD遺伝子を保有していることがわかりました(D遺伝子を保有している=DELの可能性が高い)。次に378例について抗D試薬を用いて吸着解離試験を実施した結果、解離液から抗Dの特異性が確認された検体が240例でした。これがDEL型となります。遺伝子検査でD/dと判定されDELではなかった138例は精査の結果、D遺伝子の一部(エキソン10を含む)しか保有せず、D蛋白が発現していないことからD陰性と考えられました。
240例のDEL型の96.7%がRHD遺伝子の1227番塩基の一塩基置換(c.1227G>A)を有するRHD*DEL1アリル(アジアタイプ)と判明しました。また、240例のDEL型検体は、表1に示すように、すべてRhC抗原が陽性でした。C抗原が陰性からはDELは検出されませんでした。RhD陰性の表現型頻度は、概ねr”rが36%、r rが26%、r”r”が19%、r’rが9%、r’r”が8%、r’r’が1.7%程度と推測されています。この中でC抗原陽性の表現型はr’r(9%)、r’r”(8%)、r’r’(1.7%)で、約19%程度になり、この約半数がDEL型ということになります。従って、結論としてはRhD陰性の約2割がC抗原陽性で、その半数(RhD陰性の1割)がDEL型ということです。
Rh表現型 |
抗原 |
例数 |
D陰性数 |
DEL数(%) |
r’r |
D-C+E-c+e+ |
306 |
187 |
119(38.9%) |
r’r” |
D-C+E+c+e+ |
231 |
134 |
97(42.0%) |
r’r’ |
D-C+E-c-e+ |
31 |
8 |
23(74.2%) |
r’ry |
D-C+E+c-e+ |
2 |
2 |
0(0.0%) |
r”ry |
D-C+E+c+e- |
28 |
27 |
1(3.6%) |
ry ry |
D-C+E+c-e- |
1 |
1 |
0(0.0%) |
r”r |
D-C-E+c-e+ |
1,130 |
1,130 |
0(0.0%) |
r”r” |
D-C-E+c+e- |
380 |
380 |
0(0.0%) |
r r |
D-C-E-c+e+ |
645 |
645 |
0(0.0%) |
|
合計 |
2,754 |
2,514 |
240(8.7%) |
【Keyword】#DEL表現型 #DEL遺伝子
【参考Blog】
#129:ケーススタディー(Episode:29)抗Dと微細な凝集が観察された際に考えること
https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2021/05/03/054156