RhD抗原は、Rh表現型の違いで赤血球一個あたりの抗原数が異なることが知られています。まれな血液型であるD--のD抗原数が最も多く、20万程度のD抗原数と考えられています(通常の表現型の約10倍程度多い)。そのため、希釈した抗D試薬との反応においても直接凝集反応を呈する場合もあります。また、D抗原数が多いことを活用し、低力価の抗Dを同定する際の赤血球試薬として用いられる場合もあります。一方、通常の表現型のD抗原数は平均2万〜3万程度と考えられており、D抗原が多い表現型は表1に示した通りで、R2R2>R1R2>R1R1>R1rの順となっています。但し、これは典型的な遺伝子型を想定していますので、R2R2であっても遺伝子型がDcE/dcEであれば、DCe/DCeのR1R1よりもD抗原数は少なくなる可能性があります。例えば、抗体同定の際にR2R2赤血球とのみ1+程度に反応し、R1R1赤血球とは陰性の場合、多くは抗E関係?と考えますが、時々抗Dの場合があります。これはD--の例と同様に、D抗原数が多い赤血球とのみ反応する低力価の抗Dの場合に観察されます。被検者がRhD陰性の場合は、抗Dを保有している場合があるため、Rh表現型が異なる赤血球との凝集グレードは解決の糸口になる場合もあります。
weak Dの抗原量は対応する遺伝子タイプで異なり、かなりバリエーションがあります。日本人から比較的多く検出されるtype15、type24などでは市販品抗D試薬と間接抗グロブリン試薬で1+程度の凝集程度しか観察されません。一方、サイレント変異であるc.960G>Aの変異を有した場合は、間接抗グロブリン試験で3+程度の凝集が観察されます。c.960G>Aの変異を有した一部の検体では直接凝集も観察されることから、通常D陽性の範疇なのかweak Dと判定すべきかを迷う例もかなり存在します。一方、DELになると、D抗原数は顕著に低下し、抗D試薬と間接抗グロブリン試験で凝集が観察されることはありません。そのため、DELの鑑別は抗D試薬による吸着解離試験が必須となります。日本人から検出されるDELの遺伝子タイプはアジアタイプを呼ばれるRHD遺伝子の1227番塩基の一塩基置換(c.1227G>A)が大多数を占めることから、血清学検査と併用して遺伝子検査を実施することも有用な手段となっています。
表1(赤血球一個あたりの抗原数)
表現型 |
遺伝子型 |
抗原数(概数) |
D-- |
D--/D-- |
11万〜20万 |
R2R2 |
DcE/DcE |
1.6万〜3.3万 |
R1R2 |
DCe/DcE |
2.3万〜3.1万 |
R1R1 |
DCe/DCe |
1.5万〜2.3万 |
R1r |
DCe/dce |
1.0万〜1.5万 |
weak D* |
D*/d |
100〜1万 |
DEL** |
D**/d |
20〜40 |
【Keyword】#D抗原数 #weak D #DEL
【参考Blog】
#021:Del(DEL)型の(はてな?)
https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/14/052845
#023:weak Dの(はてな?)
https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/18/204248