血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#147:輸血検査のQ&A(抗D試薬と間接抗グロブリン試験で3+程度の凝集の場合、weak Dを考慮する必要がありますか?)

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抗D試薬を用いて試験管法でRhD判定を行う際、抗D試薬と被検者赤血球を混和し、遠心判定すると通常のD陽性は3+以上の凝集が観察されます。凝集反応が陰性又は弱陽性の場合は、引き続き37℃で加温後、間接抗グロブリン試験(D確認試験)を行い最終判定します。

RhD血液型は、抗D試薬との反応性から、D陽性、D陰性の他にD抗原量が低下したweak DとD抗原が部分欠損したpartial Dが存在します。partial DはD抗原が部分的に欠損している表現型のため、使用するモノクローナル抗D試薬によって、反応するものと反応しないものがあるので比較的推測しやすいのですが、weak DはD抗原が減少しているだけの表現型であるため、殆どの抗D試薬と一様に弱くなります。そのため、判断が難しいとも言えます。では、どの程度弱くなればweak Dと判定するか、という疑問ですが、現在市販されている抗D試薬と間接抗グロブリン試験で1+〜2+であれば、weak Dの範疇と考えて良いと思います。このような反応を示す検体では、即時判定では陰性〜w+程度の凝集しか観察されません。従って、weak Dと判定する一つの目安は、即時判定で陰性又はw+程度、間接抗グロブリン試験で2+程度以下であれば、ほぼ間違いなくweak Dと考えても間違いはありません。試験管法での間接抗グロブリン試験又はカラム凝集法で3+程度の場合、次にやるべきことは、抗D試薬をPBS等で2倍連続希釈し、被検者赤血球の被凝集価を測定してみることです。概ね16倍以下であれば、weak Dと判定しても良いレベルです(対照のD陽性は512倍程度であること)。一方、32倍〜128倍程度であれば、通常よりも若干D抗原が減少しているがD陽性と判定しても特に問題にならない程度です。勿論、この程度の被凝集価の中には、まれにpartial Dが紛れ込んでくることもあります。従って、モノクローナル抗D試薬を一種類しか持っていない施設では、partial Dを否定できない、ということで悩むのも仕方ありません。これを解決したいのであれば、複数例の抗D試薬を準備するしか方法はありません。ただ、日本人のpartial Dの頻度は、比較的多いpartial DカテゴリーVaで10万人に1人程度の頻度です。しかも、DVaの場合は、Dエピトープが比較的多く、D陽性を輸血しても抗Dを産生する可能性は極めて低いと言えます。こういったことを加味して各施設で決めるのが良いと思います。

そもそも論から言えば、なぜweak Dやpartial Dを区別する必要があるかということです。それは、D陽性血液を輸血した際に、抗D産生を防止することにあります。weak Dで抗Dを産生するようなタイプは、間接抗グロブリン試験で1+程度しか反応しないタイプであることも知っておくと、3+の反応で慌てる必要がないことが理解出来ます。

 

【参考ブログ】

・#023:weak Dの(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/18/204248

 

・#024:partial Dの(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/22/073806