血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#157:輸血検査のマメ知識(現在、赤血球上の血液型抗原はいくつある?)

 2022年9月時点で、国際輸血学会(ISBT)に公認された血液型システムは44システムあり、354抗原が44システムのいずれかに属しています。血液型システム(系列)とは、同じ特徴(性質)を持つ血液型のグループであり、ヒト同種抗体で抗原が確認されること、遺伝形質であること、血液型抗原をコードする遺伝子が同定されていること、染色体上の位置が特定されていること、その遺伝子は既存の血液型遺伝子又は近接した相同体ではないことなどの要件があります。Rh血液型システム(56抗原)やMNS血液型システム(50抗原)のように多くの血液型抗原が属しているシステムもあれば、1抗原だけのシステムもあります。354抗原のうち、多型性抗原(適度に陽性と陰性が存在)は約12%、高頻度抗原(99%以上のヒトが抗原陽性)が約55%、低頻度抗原(1%以下の頻度で抗原陽性)が約33%になります。

 日本人で輸血の際に問題になる多型性抗原に対する抗体は、Rh、Duffy、Kidd、Diego、MNS、Lewisなどの抗原に対する抗体であり、それらの抗体を検出するために、輸血前に不規則抗体検査を実施し、抗D、抗C、抗E、抗c、抗e、抗Fyb、抗Jka、抗Jkb、抗Dia、抗M、抗S、抗Leaなどの抗体が検出された場合には、対応抗原が陰性の血液と交差適合試験を実施し、輸血を行う流れとなっています。

 一方、高頻度抗原に対する抗体は、高頻度抗原が陰性(=まれな血液型)の個体が輸血や妊娠による同種免疫で産生される抗体です。日本人から検出されるまれな血液型のうち、比較的検出頻度が高い血液型としてFy(a-)、Di(b-)、s-、Jr(a-)があります。また、数万人〜数十万人に一人の割合で検出されるまれな血液型として、H-(Bombay)、p、PK、En(a-)、D - -、Ko、Fy(a-b-)、Jk(a-b-)、Ge-、IFC-、Ok(a-)、Lan-などがあり、これらのまれな血液型個体が高頻度抗原に対する抗体を保有している場合には、同じまれな血液型の血液が必要になります。日本人が保有する高頻度抗原に対する抗体のうち、約6割は抗Jraです。抗Jraは妊娠歴のある女性から検出頻度が高い特徴があります。

 

【Keyword】#血液型システム #多型性抗原 #まれな血液型

 

【参考Blog】

#150:輸血検査のQ&A(抗原陰性血が必要な抗体とは?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2022/04/10/200202

 

#151:輸血検査のQ&A(まれな血液型とは?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2022/04/15/055728