血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#154:輸血検査のQ&A(酵素法:ブロメリン一段法で全てのパネル赤血球と陽性の場合の対処は?)

 

 日本人ではRh系の抗体(抗Eや抗c)の検出頻度が高い背景があります。また、ブロメリン一段法(以下、Bro法)やficin二段法はRh系抗体の検出感度が高く、産生初期の抗体などを検出できるということで、以前から好まれて使用されている背景もあります。しかし、近年では、酵素法のみ反応する抗体の臨床的意義が低いこと、ポリエチレングリコールを添加したPEG-IATの感度が高いことから、徐々にBro法を実施する施設は少なくなっています。しかしながら、使用している施設においては、時々迷うケースに遭遇する場合があります。つまり、間接抗グロブリン試験(IAT)が陰性で、Bro法のみ陽性のケースです。輸血においてIATで陰性であれば問題ないとはいうもの、やはり陽性(凝集)を見てしまえば、本当に輸血しても大丈夫か?と迷うのは当然です。Bro法で全ての赤血球と凝集が観察された際に確認すべきことは3つです。①凝集反応の強さ(1+程度の凝集なのか、それとも3+程度の凝集なのか)、②被検者は血液疾患(AML、MDS)や骨髄腫、肝硬変、膠原病などM蛋白を産生するような疾患がないか、③生食法(室温〜低温)で凝集反応がないか?、この3つを確認し、IATで陰性であることが確認されていれば、輸血上問題となることはほぼありません。

まず、3+以上の凝集があり、IATは陰性の場合は、ブロメリン試薬に対する非特異反応を疑うべきです。高頻度抗原に対する抗体の中にはIATとブロメリン法でともに陽性となる抗体(抗Rh17、抗Ku、抗Dibなど)がありますが、それらはもれなくIATでも陽性となります。逆にw+〜1+程度の場合は、冷式抗体(抗I、抗HIなど)の可能性が示唆されますので、Sal法(室温〜低温)の反応を観察する(増強する)ことを確認することで解釈ができます。また、M蛋白などを産生する疾患においては、血漿(血清)中にγグロブリンが多量に存在するため、血漿の粘度があがり、連銭形成を起こしやすい状態になります。そのような血漿(血清)を用いて、赤血球を酵素処理するBro法を実施すれば、当然のことながら弱陽性の凝集反応が観察されます。酵素処理されて赤血球のζ電位が低下し、隣接する赤血球同士の反発が弱くなっているところに、粘度の高い血漿(血清)を混ぜたら当然凝集が起こります。これを確認するなら、スライドガラスに被検者血漿と1%O型赤血球を混ぜて数分後に顕微鏡で観察することです。コインが連なるような連銭形成が確認されたら、Bro法で弱陽性になっているのは、この影響です。

 Bro法で使用した赤血球全てと陽性反応が出る場合、ブロメリン試薬に対する非特異反応(比較的凝集が強く、3+以上)、冷式抗体の影響、血漿(血清)に由来する非特異反応を疑ってみるべきです。原則的にIATで陰性であれば輸血上問題となる抗体が存在する可能性は極めて低いと考えて良いと思います。

 

【参考ブログ】

・#016:ブロメリン試薬に対する非特異反応の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/03/195525

 

・#018:不規則抗体の絞り込みの(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/07/053851