血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#149:輸血検査のQ&A(抗D試薬を用いた吸着解離試験を行う際の試薬の濃度は?)

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ABO血液型判定において、オモテ・ウラ不一致を示す亜型(Bm、A1Bmなど)の際には、抗B試薬を用いた吸着解離試験を行い、赤血球上に微量に存在する抗原(B抗原)を証明します。また、同様に、B型の混合割合が少ない(1%以下)血液型キメラ、例えばB/O(1:99)やB/A(1:99)などの場合も抗Bを用いて吸着解離試験を行い、解離液の抗B特異性の有無でB型赤血球の混在を確認することもあります。このように、血液型判定用試薬と直接凝集反応を示さないが、抗原の存在が示唆された場合は、赤血球上に存在する抗原に抗体試薬を結合し、その後、赤血球を洗浄して抗体解離試験(熱解離、酸解離、DT解離など使用した抗体に合わせて選択)を行い、解離液中に感作した抗体があるか否かを調べるのが吸着解離試験です。ABOの吸着解離試験に使用する抗A又は抗Bは、通常原液抗体又は2倍程度に希釈した抗体で行うのが一般的です。一方、抗Dを用いた吸着解離試験は、DEL型の証明の他に、血液型キメラやweak Dなどで抗D試薬と微細な凝集が確認された際に、D+の赤血球又は微量に存在するD抗原を証明する目的で行います。使用する抗D試薬は、原液で使用すると非特異反応が出ることがあるため、20倍程度に希釈し、IgG性抗Dの抗体価が16〜32倍程度にした抗Dを使用します。ABO以外の抗原を確認する際には通常はIgG性抗体を用いるのが一般的ですが、現在市販されている抗D試薬は、IgM抗D+IgG抗Dのブレンド品のため、そのまま使用するとIgM性抗Dが時々D陰性赤血球にも非特異的に結合し、非特異反応を起こす場合があるためです。IgG性抗Dのみの試薬(ポリクローナル抗D)の場合は、IgMが含まれていませんので、10倍程度の希釈でも非特異反応は起こりません。吸着解離試験に使用する抗体は、抗体価が高いからといって必ずしも微量な抗原検出に向いているとも限りません。抗原と抗体は一定の比率で最適に結合するため、少ない抗原に対して多くの抗体で感作しても、抗体過剰状態になり、逆に結合能が低下することもあります。従って、ABOの吸着解離試験に用いる抗A、抗B(IgM性抗体)の場合は512倍程度、その他のRh、Duffy、Kidd、Diegoなどの抗原の吸着解離試験には、ABOに比べて圧倒的に抗原量が少ないことも考慮し、IgG性抗体価が16〜32倍程度あれば十分ということになります。

 

【参考ブログ】

・#021:Del(DEL)型の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/14/052845

 

・#095:モノクロ抗D(IgG+IgM)を用いた吸着解離試験の注意点の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/11/10/060145