血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#144:輸血検査のQ&A(過去に造血幹細胞移植を行った患者さんの本来の血液型は?)

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白血病やMDS(骨髄異形成症候群)などの血液疾患で造血幹細胞移植を行った際、患者さんとABO同型ドナーから移植した場合は、移植後ABO血液型に変化はありません。しかし、ABOが異なるドナーから移植した場合には、移植後に赤血球はドナーの血液型に置き換わりますが血漿中の抗A又は抗Bはランドシュタイナーの法則に従わない反応になります。移植後には通常の血液型のようにA型であれば血漿中に抗Bを、B型であれば血漿中に抗Aを保有するとは限りません(むしろ、通常はオモテ・ウラ不一致になる)。

例えば、オモテがA型、ウラがAB型の場合、亜型であればA1Bm型が想定されますが、過去に造血幹細胞移植を行った場合は、AB←A(患者AB、ドナーA型)やB←A(患者B型、ドナーA型)が想定されます。そして血液型判定では、オモテがA型、ウラがAB型のオモテ・ウラ不一致になります。B型患者へA型の移植を行った場合、生着後にA型の赤血球に置き換わります。通常のA型であれば血漿中には規則抗体として抗Bを保有しますが、この患者さんの本来の血液型がB型のため、血漿中や血管内皮などにはB型物質が存在します。移植されたA型の幹細胞から分化したリンパ球から抗Bが産生されても、血漿中の型物質(B型)や血管内皮等に発現するB型物質で中和されるため、血漿中の抗Bは通常検出されません。同様に、AB←BやA←Bの移植のケースにおいては、オモテB型、ウラAB型になります。

このような場合に、患者さんの本来の血液型は赤血球の血液型を調べたのではわかりません。また、血液を試料とした遺伝子検査を行っても移植した血液型になりますので、本来の血液型はわかりません。このようなケースでは、唾液や爪など体細胞由来の試料を用いてABO型を検査することで本来の血液型を調べることができます。唾液や爪などの体細胞試料は一生涯変わらないことから、移植などを行った被検者の検査には必須です。

 

【参考Blog】

・#135:ケーススタディー(Episode:35)B型患者が過去にA型ドナーから造血幹細胞移植を行った例

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2021/06/14/090743