抗D試薬を用いて試験管法でRhD判定を行う際には、試験管に抗D試薬を滴下し、その後、被検者の赤血球浮遊液を1滴加えて、よく撹拌後、遠心判定します。殆どの場合、3+〜4+の凝集が観察され、D陽性と判定されます。しかし、w+〜1+程度の凝集の場合は、weak DなどのD亜型を疑い、37℃に加温後、間接抗グロブリン試験(IAT)(D陰性確認試験)によって最終判定します。weak Dの場合は、D抗原量が少ないため、直後判定では弱陽性を示しますが、後続の間接抗グロブリン試験を実施した際には、直後判定よりも強い反応を示します。従って、直後判定とIATの凝集強度が同程度の場合は「何かおかしい」と思った方が良いでしょう。こういったケースで一番多いのが、D+(D陽性)とD-(D陰性)の血液型キメラです。血液型キメラの場合は、通常の抗原量を有するD陽性赤血球とD陰性赤血球が混合された状態です。例えば、D陽性が10%、D陰性が90%程度の場合、直後判定でD陽性が1+程度に反応しますが、IATを実施しても同程度(1+〜2+)の凝集しか観察されません。
weak D又はD抗原が通常よりも少ないケース(weak Dと通常のD陽性の中間型)で直後判定が1+程度であれば、IATでは3+以上になります。従って、直後判定とIATの凝集強度が変わらない、という場合は、まずは血液型キメラを疑うことが解決のポイントになります。
【参考ブログ】
・#127:ケーススタディー(Episode:27)抗Dを用いたIAT判定の凝集像が特徴的なRhD血液型キメラ
https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2021/04/22/052325
・#129:ケーススタディー(Episode:29)抗Dと微細な凝集が観察された際に考えること
https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2021/05/03/054156