間接抗グロブリン試験でパネル赤血球すべてと陽性反応を示し、高頻度抗原に対する抗体が疑われた場合、通常の同種抗体を同定するようにパネル赤血球との反応性だけでは特異性を決定できません。そのため、赤血球側からのアプローチとして抗原タイピングを実施し保有する可能性のある抗体の推定を行います。一方、血清側からのアプローチとして酵素及び化学処理赤血球との反応性を観察し抗体の絞り込みを行います。ficin、trypsin、α-chymotrypsinなどの蛋白分解酵素や、DTT(dithiothreitol)及びAET(2-aminoethylisothiouronium bromide)などの還元剤試薬で処理した赤血球と未処理赤血球との反応性を比較し、どの血液型システムに対する抗体かを推定します。例えば、抗Fya、抗s、抗JMH、抗KANNO、抗Ch/Rgなどの抗体はficin処理赤血球で抗原が破壊されるため反応が消失(低下)します。一方、抗Dib、抗LW、抗Rh17などの抗体では反応が増強します。また、抗JMH、抗LWなどはDTT処理赤血球との反応が消失(低下)し抗体に関する情報が得られます。被検血清を5倍~10倍に希釈して反応を観察するか、抗体価測定を行うことも抗体に関する情報が得られるポイントになります。抗Jra、抗JMH、抗KANNO、抗Ch/Rgなどは高力価低凝集力抗体(HTLA:High Titer Low Avidity)とも呼ばれ、抗体価が高くとも凝集が脆く弱い性質を示します。また、Ch/Rg抗原はLewis血液型と同様に血清中に型物質が存在するため、同種血清で抗体が中和される性質があります。各抗体の性質からどの血液型システムに対する抗体かを絞り込み、最終的に推定した高頻度抗原陰性赤血球(まれな血液型赤血球)との反応性から特異性を決定します。ここに記載した同定方法は、あくまで同種抗体(高頻度抗原に対する抗体)ですので、自己赤血球とは陰性であることが前提となります。
【Keyword】#高頻度抗原に対する抗体 #酵素・化学処理 #まれな血液型
【参考Blog】
#018:不規則抗体の絞り込みの(はてな?)
https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/07/053851
#151:輸血検査のQ&A(まれな血液型とは?)
https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2022/04/15/055728