血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#129:ケーススタディー(Episode:29)抗Dと微細な凝集が観察された際に考えること

f:id:bloodgroup-tech:20210504051653p:plain

 Rh血液型の判定は被検者赤血球と抗D試薬の反応で判定しますが、直後判定が陰性の場合は、引き続き間接抗グロブリン試験を行い最終判定します。しかし、時々検体1のように間接抗グロブリン試験で一部の抗D試薬とw+程度の微弱な凝集が観察される場合があります。weak Dにしては反応が弱すぎて、しかも一部の抗Dとのみ陽性というのも不自然、Del(D elution)型では通常抗Dと凝集反応は認められません。このような検体に遭遇した際には、D+とD-の血液型キメラ(D+が数%の血液型キメラ)又は、Del型を想定することも必要です。Del型は通常は抗Dと凝集が観察されませんが、一部の検体では、w+程度に反応する場合があります(抗原量の問題と使用する抗体試薬の違いで生じる)。また、キメラの場合であっても試験管法では3~5%の赤血球浮遊液を用いるため、D+の混合率が7%程度以下のキメラでは陰性と判定されます。10%程度の混合率でようやく凝集が観察される程度です。そのため、抗体価の高い抗D試薬や血球濃度調整などによって、凝集したり、しなかったりと再現性に乏しい反応が観察されます。このようなケースに遭遇した際、次の一手は抗Dを用いた吸着解離試験を行い、間接抗グロブリン試験で見られたw+の凝集が抗DとD+赤血球によるものかを判断することです。解離液の抗D抗体価測定を行い鑑別する方法です。通常Del型では、解離液の抗体価は間接抗グロブリン試験で2~4倍程度です。一方、D+が5%程度入ったキメラでは抗体価が16倍~32倍程度になります。

 

f:id:bloodgroup-tech:20210426203859p:plain

 今回の検体1、検体2ともに、Del型の検体です。遺伝子検査においても、日本人から高頻度に検出される遺伝子変異(c.1227G>A)を有する検体です。Del型は時々使用する抗D試薬とw+程度の凝集が観察されるため、その判断に迷います。Del型は、Rh表現型のC抗原が陽性であることも特徴になりますので、被検者のRhC抗原が陰性であればDel型の可能性は極めて低いと考えられます。その場合は、キメラや非常に抗原量が少ないweak Dを想定する必要があります。因みに、weak Dのtype15やtype24は日本人から比較的高頻度に検出され、抗Dと間接抗グロブリン試験で1+~2+の弱い反応を示す典型的なweak Dです。

 これまで数回RhDキメラについてシェアしてきましたが、RhDキメラの可能性があるときは、スライド法で直接凝集を観察したり、抗D吸着解離試験で解離液の抗体価を測定したり、解決のために血清学的検査でもやれることがあることを知っておくと解決の一助になります。

 

 【関連blog】

・#021:Del(DEL)型の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/14/052845

 

・#023:weak Dの(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/18/204248

 

・#095:モノクロ抗D(IgG+IgM)を用いた吸着解離試験の注意点の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/11/10/060145