オモテ検査で抗B試薬と部分凝集を示し、ウラ検査では通常のB型の検体に遭遇する場合があります。スライド法による抗B試薬との反応において、凝集開始時間は若干遅く、時間経過とともに中程度の凝集塊から微小凝集が混在し、反応しない赤血球も認めます。また、血漿中のB転移酵素活性は通常のB型よりも若干弱いながら検出されました。さて、この検体はB亜型(B3)なのでしょうか? それとも、血液疾患等による後天的な抗原減弱と考えた方が良いのでしょうか?
このような症例に遭遇した場合には、まずは被検者情報を収集することが解決の糸口になります。例えば、疾患、輸血歴、移植歴、双生児の有無、以前の検査履歴、血縁者の血液型(亜型)情報などです。
また、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、一部のリンパ系腫瘍では、A、B及びH抗原の発現が減弱していることが報告されています。この被検者の疾患はMDSであることから、この反応は血液疾患等による後天的な抗原減弱の可能性が高いと考えて検査を進めた方が良いでしょう。
精査の結果、オモテ検査ではB3様の反応態度を示しましたが、血漿中にはB転移酵素を認め(亜型の多くはABO遺伝子のエキソン7領域の一塩基置換により生じるため、血漿中B転移酵素活性は認められません)、データを示していませんが唾液中にはB、H物質が正常B型と同レベルで存在していました。また、赤血球のH抗原も減少していることが示唆されています。これらの結果からも抗原減弱の可能性が示唆されます。FCM解析によるB抗原解析においても陰性領域から陽性領域に連続的なヒストグラムパターンが確認されました。抗原量が異なる赤血球が混在していることを確認するのは、スライド法による反応を観察し、フローサイトメトリーによる抗原解析が解決する一助になります。但し、FCM解析だけはなく、血清学的検査と被検者情報を含めた総合判断が重要なのは言うまでもありません。
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