血液型検査のサポートBlog

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#124:ケーススタディー(Episode:24)自己抗体の吸着操作における予期せぬ反応

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 血漿(血清)中に自己抗体が存在し、直接抗グロブリン試験(DAT)が陽性の場合、自己抗体を吸着除去する際には、まずは自己赤血球を酸処理(EA処理)し、DATを弱陽性にした自己赤血球を用いて自己抗体を吸着除去するというのが、教本等に記載されています。しかし、EA処理する試薬を持っていない施設もあります。また、必ずEA処理しないと吸着されないのか?という疑問を持つ人もいると思います。

実は、DATが1+~2+程度で、血漿(血清)中の自己抗体の強さがLISS-IAT又は60分加温-IATで2+~3+程度の場合は、自己赤血球をEA処理すること無く、そのまま使用してもPEG吸着法であれば十分自己抗体は吸着除去されます。但し、DATが3+以上で血清中に比較的強い抗体(目安としてLISS-IATや60分加温-IATで16倍以上)がある場合は、やはりEA処理などで一旦自己赤血球に感作(結合)している抗体を解離してから、自己吸着を行う方が確実です。

 

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 仮にEA処理していない自己赤血球を用いて血漿(血清)中の自己抗体の吸着を行ったが、その吸着上清に自己抗体が残っている場合に考えることは、DATが強陽性のために血漿(血清)中の自己抗体が全て吸着除去できていない、又は、DATの強さが2+程度であるが、血漿(血清)中の自己抗体が強い(抗体価が強い)場合に吸着しきれない場合です。通常はDATが1+~2+程度で、自己抗体の強さがPEG-IATで3+以下であれば、EA処理することなくそのままでも吸着が可能である。但し、DATが3+以上で血清中の自己抗体が4+になっている場合は、一旦、自己赤血球をEA処理し、その後吸着するというのが問題解決となります。また、血漿(血清)中にM蛋白やγグロブリンが多くなる一部の患者さんでは、自己抗体は吸着されても、γグロブリン等が吸着されずに残るため、吸着上清とパネル赤血球との反応が1+程度を示すことがあります。PEG-IATで2+~3+に反応する自己抗体が一回の吸着で除去されないことはありません、従って、吸着上清が1+以上を示すような場合に考えることは、血清中に自己抗体以外(γグロブリン、免疫複合物など)の存在やHTLAの高頻度抗原に対する抗体(抗Jraや抗Knopsなどの抗体)が混在しているかもしれないと考えることです。

また、DAT弱陽性の自己赤血球で自己抗体を上手に吸着する場合、吸着回数を増やすことも一つの方法です。例えば、患者赤血球(DAT:2+~3+)の赤血球沈査を2本の試験管(①、②)に1mLずつ採取し、①の試験管に患者血漿(血清)を1mL、PEGを1mL加えて37℃で15分間吸着操作を実施します。その後、3,000回転5分間遠心し、上清をすべて②の試験管へ移します。37℃で15分間吸着操作を実施することで2回の吸着操作を実施したことになります。これで殆どの場合は自己抗体のみであれば吸着上清中には何も残りません。これでも残る(吸着上清とパネル赤血球との反応が1+~2+反応する)という場合は、赤血球抗体以外の何かがあると考えた方が良いでしょう。

 

【関連Blog】

・#034:DAT陽性赤血球のEA(酸)処理の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/03/23/055120

 

・#052:凝集の強弱が特徴のKnops系抗体の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/05/14/071006