血液型検査のサポートBlog

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#123:ケーススタディー(Episode:23)pan-reactive自己抗体に混在した同種抗Eと自己抗eの同定

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 自己抗体の血液型特異性は、同種抗体とは異なり自分の赤血球上に存在する抗原に対して特異性を示す抗体です。例えば、R1R1(D+C+E-c+e+)型個体であれば、抗D、抗C、抗e、R2R2(D+C-E+c+e-)型の場合は、抗D、抗E、抗cなどの血液型特異性を有する自己抗体を保有するということです(単一の場合もあれば、複数の場合もある)。また、血液型特異性を示す自己抗体のみが存在する例は少なく(殆ど無い)、pan-reactiveな性質(血液型特異性のない性質)の自己抗体に混在しています。殆どの検体では、pan-reactiveな自己抗体の方が抗体価は高いため、血液型特異性を示す自己抗体の存在はマスクされています。従って、多くの場合は(pan-reactiveな自己抗体の)吸着操作によって証明されます。吸着操作を行う場合、自己赤血球を用いた吸着操作では自己抗体の特異性は分かりません。血液型特異性を示す自己抗体は、自己赤血球の抗原が陽性であるためpan-reactiveな自己抗体とともに自己赤血球では吸着されます。自己抗体に混在した同種抗体を検出する目的であれば自己赤血球を用いた吸着は有用ですが、自己抗体の血液型特異性を確認する場合は、血液型が既知の同種赤血球(R1R1、R2R2、rrなど)が必要となります。

 

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 通常、3+以上の反応を示す自己抗体が存在すると、若干の強弱はありますが、それが特異性による強さなのか、使用した赤血球との反応によるものなのかは判別できません。従って。同種抗体の有無を調べたい場合は、自己赤血球で血漿(血清)を吸着し、吸着上清とパネル赤血球との反応から同種抗体の同定を行います。但し、3ヵ月以内に輸血歴がある場合には、自己赤血球とは言っても輸血した同種赤血球が混在していることになりますので、自己赤血球を吸着に使用することは出来ません(例えば、抗Eが産生されても、少し前に輸血した赤血球がE+型であれば、自己吸着上清には残らないため)。従って、そのような場合は、血液型が既知の数種類の赤血球を用いて吸着操作を行います。また、自己抗体の血液型特異性を調べる際にも血液型が既知の数種類の同種赤血球を使用します。

 自己抗体の血液型特異性を調べる意義については、それほど重要性はありません。上述したように、自己抗体の多くの例では、すべての赤血球と反応するpan-reactiveな自己抗体が大半を占め、その中に血液型特異性を示す自己抗体が存在します。仮に自己抗体に特異性(例えば抗Dとか抗eとか)があっても、pan-reactiveな自己抗体がある以上、輸血用血液製剤の選択に影響はありません(何を選んでも同じように反応するため)。但し、時々pan-reactiveな自己抗体よりも血液型特異性を示す自己抗体の方が顕著に抗体価が高い場合があります。そのようなケースでは、自己抗体であっても対応抗原が陰性の血液の方が輸血効果が得られる場合もあります(但し、これはAIHAなどの場合です)。

 

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 この患者のRh表現型は、R1R1(D+C+E-c+e+)型で、自己赤血球を用いた吸着操作を行い、吸着後上清とパネル赤血球との反応を観察した結果、抗Eの特異性が確認されました。患者のE抗原が陰性であることから、これは同種抗体の抗Eであることがわかりました。次に、表現型の異なる3種類の赤血球沈渣でそれぞれ吸着操作を行い、吸着後上清の反応を観察した結果、R1R1型とrr型の吸着上清から抗Eの特異性が確認されました。R2R2型(D+C-E+c+e-)の吸着上清からは抗eの特異性が観察されました。これが自己抗体の特異性です。R1R1型とrr型赤血球による吸着操作ではpan-reactiveな自己抗体と抗eの自己抗体が吸着されるため、吸着上清からは抗eの特異性は確認出来ません。このように対応抗原が陽性では吸着され、陰性では吸着されずに残ってくる抗体をリアルな特異性と示す自己抗体と言います。一方、Mimicking抗体とは、一見、特異性があるように見えても、対応抗原が陰性及び陽性のどちらでも吸着除去されてしまう抗体です。

 仮に今回、自己赤血球による吸着操作が出来なかったとすれば、特定された抗Eと抗eのどちらかが同種で、もう一方が自己抗体となります。それを判別するのは、患者の血液型(表現型)ということになりますので、輸血前の検体を採取しておくか、輸血前に主な血液型を調べておくことは、後々抗体特異性が出た際にスムーズに解釈ができることになります。

 

【関連Blog】

・#031:自己抗体の血液型特異性の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/03/14/062817

 

・#100:Mimicking抗体(抗E)の鑑別の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/12/05/052523