血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#142:輸血検査のQ&A(Ulexレクチンとの反応でA2型はなぜ4+になるのか?)

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Ulexレクチン(抗Hレクチン)は、H抗原と反応するレクチンであり、H抗原が多い赤血球と反応します。H抗原は、AやB抗原の土台となる抗原であるため、A、B抗原がないO型ではH抗原が一番多く、逆にA、B抗原があるA1B型が一番少なくなります。通常の赤血球上には150〜160万レベルのH抗原が存在すると考えられていますが、全てのH抗原にAやB抗原が付加されるわけではありません。A型では1つの赤血球に100〜120万コピー程度、A抗原が存在と考えられていますので、差し引き40〜50万のH抗原が残っていることになります。一方、B型では70〜80万コピーと考えられていますので、差し引き70〜80万コピーのH抗原が残っています。従って、H抗原はB型>A型となり、Ulexレクチン(抗Hレクチン)との反応もA型よりもB型の方が強く反応するということになります。

赤血球上のA型糖鎖構造をわかりやすく簡単にいうと、赤血球膜⇒H抗原(Fuc)⇒A抗原(GalNAc)⇒H抗原⇒A1抗原(GalNAc)(⇒の順に糖が付加されていく)になっています。B型糖鎖の方は、赤血球膜⇒H抗原(Fuc)⇒B抗原(Gal)です。どちらも土台となるH抗原にA糖転移酵素、B糖転移酵素の働きで糖が付加されて抗原が生合成されます。

赤血球膜⇒H抗原(Fuc)⇒A抗原(GalNAc)を2型A赤血球膜⇒H抗原(Fuc)⇒A抗原(GalNAc)⇒H抗原⇒A1抗原(GalNAc)を3型Aともいいます。どちらも末端部はNアセチルガラクトサミン(GalNAc)ですが、3型Aの方がA1抗原と考えられています。つまり、A1抗原を欠いているA2以下(A2、A3、Axなど)の表現型赤血球では、H抗原が露出(むき出した)した状態になっています。そのため、A2型では、通常残っているH抗原に加えて3型Hの分が上乗せされますので、H抗原が多くなるというメカニズムになります。そのためUlexレクチン(抗Hレクチン)との反応性(強さ)は、O型、A型、AB型、B型、A型、AB型の順になります。AB型は一番H抗原が少ない表現型ですが、AB型の亜型であるAB、ABやcisAB型との反応が4+程度に反応するのは、このようなメカニズムのためです。

 

【参考Blog】

・#098:血液型精査におけるレクチンの活用の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/11/25/053824