血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#141:輸血検査のQ&A(A3とAx、B3とBxはどのように鑑別するの?)

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A3とAxはA型の亜型であり、B3とBxはB型の亜型です。どちらもオモテ検査(試験管法)では、抗A又は抗Bと弱い反応(w+〜2+)を示し、スライド法ではしばらく観察しないと凝集が見えてきません。教科書的には抗原量の多い方がAやBであり、さらに少ないものがAやBと記載されています。しかし、これはあくまで典型例であり、現在使用している抗A、抗Bがモノクローナル抗体なので、教科書に記載されている反応(従来のヒト由来血清の反応)より比較的強めに反応が出てきます。従って、抗A、抗Bの強さだけでは両者の鑑別はできません。A3であってもw+〜2+とバリエーションがあり、Axであっても2+程度に反応することもあります。従って、抗A、抗Bとの反応性だけでは鑑別が難しいということです。

では、現実的にはどうやって鑑別するかといえば、これが絶対的な正解ではありませんが、鑑別ポイントは大きく2つ、①血漿(血清)中に不規則性の抗Aや抗Bを保有しているかどうか、②O型血漿(抗A,B)との反応が、抗A、抗B試薬よりも強く反応するか、この2点が血清学では重要です。A3、B3では、抗原量が減少していても不規則性の抗Aや抗Bを保有することは多くありません。一方、Ax、Bxでは殆どの例で抗体を保有しています。また、O型個体が保有する抗A、B(エーカンマビー)は、抗A、抗B試薬よりもAx、Bxとの反応性が高い(つまり強く反応する)傾向があります。但し、どのO型でも良いというわけではなく、ある程度事前にAやBと強く反応する血漿をストックしたもので比較した方がより鑑別に適しています。その他に、血漿中の転移酵素活性が認められない、ABH分泌型であっても唾液中から型物質が認められない(少量のため検出感度以下)という特徴を持つのがAやBなので、このあたりが鑑別のポイントになります。勿論、この他にFCM解析や遺伝子検査も有用な手段となりますが、まずは血清学的な性質を観察することが重要です。

 

【参考Blog】

・#006:ヒト血漿(血清)中の抗A、抗Bの(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/01/07/201116

 

・#115:ケーススタディー(Episode:15)O型が保有する抗A,Bの反応がポイントになるBx型

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2021/02/16/052545