血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#137:輸血検査のQ&A(亜型の患者さんへの輸血)

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ABO亜型とは、赤血球上のA型又はB型(又は両方)の抗原が先天的に減少している表現型をいいます。血液疾患(AML、MDSなど)等で一過性(後天的)にABH抗原が減弱した表現型は亜型とは言いません。但し、両者の鑑別は非常に難しく、とくに被検者が血液疾患等の場合は、一回の検査だけでは鑑別できない場合もあります。

A亜型を例にすると、抗原量が多い順に、A、A2、A3、Ax、Am、Aelのように分類されます。現在市販されているモノクローナル抗体(抗A)を用いて試験管法で検査すると、抗体価が高い試薬であるためAとA2は4+の反応を示し通常のA型と判定されます。A3の中でも抗原量が低い(抗Aによる被凝集価)が32倍程度以下で3+〜2+の凝集となります。試験管法で比較的強い凝集があっても、スライド法で観察すると明らかに凝集開始時間が遅いことに気が付きます。Axはw+〜2+とバリエーションがあり、A3との鑑別が難しい亜型です。Am、Aelになると抗Aとは直接凝集が観察されず、抗Aを用いた吸着解離試験によって、赤血球上に存在する微量なA抗原が証明されます。また、Ax、Aelでは、血漿(血清)中に不規則性の抗A1を保有します。同様にB亜型は、B3、Bx、Bm、Belがあり、このうち不規則性の抗Bをほぼ保有するのはBxとBelです。Am及びBmでは不規則性の抗A1や抗Bは保有しません。また、亜型のカテゴリーを明確に区分することは難しく、様々な血清学検査の結果をこれまで検出された亜型と照らし合わせながら決定していくことになります。

輸血を受ける患者さんが亜型と判定された場合、注意すべきことは、血清中に不規則性の抗A1又は抗Bを保有しているか否かが重要です。亜型だからといって輸血の際に同じ亜型の血液を輸血する必要はありません。例えば、A3であっても、抗A1を保有せず、規則抗体の抗Bのみであれば、輸血はA型となります。BmのようにオモテO型、ウラB型であっても精査の結果Bmと分かればB型の選択となります。従って、亜型の患者さんが輸血を行う場合は、A亜型であればA型を、B亜型であればB型の血液との交差適合試験で陰性であればとくに問題になることはありません。A3、B3などで時々、低温反応性の抗Aや抗Bを保有する場合がありますが、37℃相まで反応するような抗A1や抗Bを保有する例はcisA2B3やcisA1B3が保有する抗Bくらいです。このようなケースの場合のみ輸血用血液にA型やO型の赤血球が選択されます。

 

【参考Blog】

・#008:シスAB型の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/01/13/204740