ABO血液型判定のオモテ検査の抗A又は抗B試薬との反応において、亜型と言うほど抗原量の低下はないものの、僅かに反応しない赤血球がある、又は若干背景に濁りを生じる場合があります。このような検体では通常ウラ検査は正常であり、ABO血液型の判定としては正常の範疇というような検体です。とくにAB型において抗B試薬の背景が僅かに濁っているというような検体に遭遇する場合があります。ここでは、抗B試薬との反応が弱いAB型(ABmos?)の(はてな?)についてシェアしたいと思います。
赤血球上のABHは糖鎖抗原であり、A転移酵素及びB転移酵素によって糖が付加されて生合成されます。しかし、糖鎖抗原系の抗原では個体差があり、とくにAB型のB抗原においてはA転移酵素との競合も生じるため、B抗原のばらつきは大きくなります。亜型や疾患等による抗原減弱以外の健常人においても、抗原量にばらつきが生じていることは、「#088:赤血球A,B抗原量と血漿中A,B転移酵素活性の(はてな?)」に記載したとおりです。従って、抗B試薬との反応において背景がほんの僅か濁っているのはAB型では正常の範疇と考えても問題ありません(勿論、オモテ・ウラが一致していること)。しかし、その濁りの程度が増し、明らかに濁りが生じる場合は、ABmosの可能性があります。Amos、Bmos、AmosB、ABmosは亜型の一種ですが、国際的にはA3、B3の範疇と考えられるようになりmosという表記をすることは殆どありません。但し、国内においては以前から亜型カテゴリーの一部として使われている背景があるため、現在でも使われる場合があります。また、Amos(Bmos)とA3(B3)の明確な区別がないため、検査を担当する人の感覚的な部分もありまが、Amos(Bmos)という概念は抗原量が異なる集団(A1型~Ax型レベル)が混在し、典型的なA3(B3)型と比べて、通常レベルの抗原量を有する赤血球が混在する場合に用いられることがあります。こういう表現型を現在では、A3(B3)型のカテゴリーの一部として扱われるようになってきたのも事実です。また、典型的なAmos、Bmos、AmosBは非常に少なく、日常検査で遭遇する確率が高いのはABmosが圧倒的に多いと考えます。A1B3型と決めるほどB抗原量が低下していない、但し通常のAB型とするにはB抗原量が少ない(抗Bとの反応が弱い)というものが該当します。
そこで、このような検体(抗B試薬において背景に濁りを生じる検体)についてFCM解析を用いてB抗原の分布を調べてみました。その結果が[SL.1、SL.2]となります。解析の結果、FCMパターンに基づきA~Eの5つのグループに分けることが出来ました。典型的なA1B3型(2例)をSL.2の下段に示しました。グループDは、通常のAB型と判定しても問題ない検体ですが、僅かに抗Bと反応しない赤血球があるため、カラム法などでは中間層から底部に赤血球が一部認められます。グループAとBは、陰性領域から陽性領域まで連続的なパターンで抗原量が異なる様々な抗原量の集団が存在していることになります。O型に近い抗原量が多いのがグループAになります。どちらかと言えば、グループAとBが典型的なmosと呼ばれるグループです。グループCは一見血液型キメラ様のパターンで、陰性と陽性が比較的はっきりした集団があり、O型に近い抗原量の集団が多いため、かなり濁りを生じます。グループEは、血清学的にはA1B3型と判定しても間違いではない範疇の検体です。陽性領域にも集団があるため、スライド法では凝集開始時間が典型的なA1B3型よりも早いこと、典型的なA1B3型(エキソン7の一塩基置換)との相違点は、血漿中のB転移酵素がABmosでは検出される点です。但し、ABmosでは血漿中のB転移酵素が検出されるといっても、若干低い傾向があります。これについては、次の記事でシェアします。ここでは、ABmosといっても様々なバリエーションがあることをまずはシェアしたいと思います。