血液型検査のサポートBlog

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#042:Chido、Rodgers血液型とその抗体の特徴の(はてな?)

 Chido(Ch)とRodgers(Rg)抗原は、補体成分のC4と関連があり、C4AにはRg抗原が、C4BにはCh抗原が存在します。Chido/Rodgers血液型は本質的には赤血球膜に発現する抗原ではなく、補体成分が赤血球上に結合し抗原性を示します。そのため、個々の血球によって抗原量に差があるのが特徴です。ここではChido、Rodgers血液型とその抗体の特徴の(はてな?)についてシェアしたいと思います。

 Chido(Ch)とRodgers(Rg)はISBT(国際輸血学会)では、17番目の血液型システムとして登録されています。Chidoが7種類、Rgが2種類の計9種類の抗原で構成(血清学的に分類できない)され、日本人のCh-の頻度は2.6%、Rg-は0.3%と推定されています。

 抗Ch、抗Rgを産生する人は、自身のCh又はRg抗原が陰性であり、輸血又は妊娠等の免疫刺激を受けることによって抗体(高頻度抗原に対する抗体)を産生します。そのため、不規則抗体同定用パネル赤血球や交差適合試験では通常は全て陽性となります(自己対照赤血球は陰性)。しかし、抗体が比較的弱い場合、陰性~2+の反応を示すため、全てのパネル赤血球と陽性にならず、高頻度抗原に対する抗体を疑わずに検査を進めてしまい、その結果、パネル赤血球の組成表と合致する抗体が見当たらないという状況になります。Ch/Rg抗原は個々の赤血球間でばらつきがあり、その抗体もHTLAの性質を有します。加えて凝集に強弱があるため、主な血液型抗原に対する複数抗体の存在も考慮しなければならず、同定不能に陥ってしまいます。

 Ch/Rgと類似の反応を示す抗体として、Knops血液型に対する抗体が知られています。Knops血液型は、赤血球のCR1(補体レセプター)上に存在します。CR1は個々の赤血球に存在するCR1分子の数にばらつきがあるため、抗Knops(抗Ykaなど)を保有した血清とパネル赤血球との反応性を観察した際、凝集強度にばらつきが認められます。

 このような抗体に遭遇した際には、解決の糸口として血漿(血清)を生理食塩液又はリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で5~10倍に希釈するか、抗体価を測定することが解決の糸口になる場合があります。2+程度の凝集が観察される抗体(主な血液型抗原に対する抗体)では、抗体価はせいぜい2倍又は4倍程度です。つまり希釈した血漿(血清)において8倍以上になることはありません。もしも原液血漿(血清)と希釈した血漿(血清)の反応が同じような凝集態度であればHTLA抗体の可能性が示唆されることになります。また、60分加温-IAT>PEG-IATの反応態度の場合も、HTLAの可能性が示唆されます(通常の抗体では、PEG-IATの方が圧倒的に強く反応する)。

 抗Ch又は抗Rgを保有した際の赤血球輸血ではHTR(溶血性輸血反応)の原因抗体となることは稀です。また赤血球寿命試験でも異常は認められていない報告があります。なお、FFPやPC製剤など多量の血漿(補体成分)を輸注後にショックなどの非溶血性副作用を認めた例が過去に報告されていますが、これらの抗体価は未処理血球で数千倍~数万倍であり、オクタロニー法などで沈降線が確認できるレベルです。こうした抗体価の高い例はかなり稀な例です。これまで自分が経験した複数の抗Ch、抗Rgの例では未処理赤血球と60分加温-IATで64倍~256倍程度でした。また、これらの抗体を保有する患者さんへRBC及びFFP製剤を輸血しましたがHTRを起こした例はありません。従って、未処理血球と256倍程度であれば、洗浄赤血球等の対応も必要なく通常の赤血球製剤で対応可能と考えられます。