血液型検査のサポートBlog

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#043:抗Ch、抗Rgの同定方法の(はてな?)

 抗Ch、抗Rgは間接抗グロブリン試験でのみ検出される抗体であり、検査した赤血球間で凝集の強弱が著しく、抗体価が高いにもかかわらず、Rh系抗体などの様な強固な凝集を示すことは稀で試験管を振っていくうちにどんどん崩れてしまうHTLA(High Titer Low Avidity)の性質を有します。ここでは、抗Ch、抗Rgの同定方法の(はてな?)についてシェアしたいと思います。

  抗Ch/Rgの抗体同定は、判定が難しい抗体であるため、抗原と抗体の性質をうまく活用することが重要です。ficin、trypsin、α-chymotrypsinなどで処理した赤血球では反応性が消失しますが、AET、DTTでは変化がありません。また、臍帯赤血球は成人血球と比べて反応が弱い特徴があります。何より抗原量が個々の赤血球でばらつきがあるため、抗体価が比較的低い抗体では、パネル赤血球との反応はw+3+の凝集が観察されます(弱い抗体の場合は、抗原量が多い赤血球と強い凝集が観察される)。また、Ch/Rgは血漿(血清)中に存在するC3,C4の補体成分が赤血球膜に付着し抗原性を有するということが、他の血液型とは異なる点であるため、血漿(血清)により凝集抑制される性質を活用し同定作業を行います。

 検査した全ての赤血球と反応するが、自己対照赤血球は陰性であること、酵素処理赤血球の反応が陰性になること、HTLAの性質が観察される(又は全て陽性であるが凝集に強弱を認める)ことを前提に以下の方法で抗体の絞り込みを行います[SL.1]。

同定作業のステップ1・・・①2本の試験管を準備し、1本目に血清+PBS、2本目に被検血清+プール血清を加えて、37℃で45~60分間加温します(被検検体が血漿の場合はプール血漿を用いる)。②強く反応した赤血球を2本の試験管に1滴ずつ加えて間接抗グロブリン試験を行う。[結果の解釈]PBSの方が凝集を示し、プール血清を入れた試験管が陰性となれば、抗Ch、抗Rgの可能性が高いということになります。つまり、添加した血清中のC4で抗体が抑制されたことになります。

同定作業のステップ2・・・①弱く反応した赤血球を用いて、C3C4感作赤血球を作製する。②被検血清とC3C4感作赤血球の反応において、未感作よりも感作赤血球で凝集強度が増強していることを観察する(間接抗グロブリン試験)。[結果の解釈]反応性が増強すれば抗Ch、抗Rgの可能性は極めて高いと考えられます(w+から4+へ反応が増強する)。弱く反応した赤血球にC3C4を感作することがポイント。C3C4感作赤血球の作製は、10mLの試験管にプール血清と赤血球沈渣を入れ、そこに10%スクロース(ショ糖)を加えて37℃で加温すると、C3C4感作赤血球を作製することができます。作製した赤血球を浮遊液にして使用しますが、多特異抗体を用いたDATを実施すると3+~4+になります。従ってC3C4感作赤血球を使用する検査では抗IgGを用いることがポイントです。

同定作業のステップ3・・・①Ch―Rg+、②Ch+Rg-の血清を用いた抑制試験で行う。通常の血清はCh+Rg+であるため凝集が抑制されます(ステップ1の検査)。[結果の解釈]①で抑制された際には、抗Rg、②で抑制された際には抗Chということになります。

 抗Ch/Rgの同定は凝集抑制試験とC3C4感作赤血球の反応から同定することが鉄則です。他の血液型抗体のように抗原側からのアプローチすることは難しい(強い抗体がないこと、抗原量にばらつきがあること、反応が陰性となった場合でも信頼性に欠けるため)。混在する抗体については、酵素又は化学処理赤血球を用いて混在する抗体を同定します[SL.2]。混在する抗体がRh系(抗Eなど)、抗Dia、抗Jka、抗Jkbなどの場合はficin処理赤血球の反応から混在抗体の特定が可能ですが、抗Fyb、抗Sを同定する場合は、Trypsin処理赤血球を用いることがポイントになります。

 

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