ヒト赤血球上に存在する血液型と言えば、、殆どの人が真っ先に思い浮かぶのはABO血液型です。しかし、赤血球上にはABO血液型以外にも多くの血液型が存在しています。2019年時点で、国際的に承認されている血液型(国際輸血学会の血液型リストに登録されている血液型)は、なんと364抗原もあります。そのうち、326の血液型抗原が36のグループ(血液型システム)のいずれかに属しています。ここでは血液型システムについてシェアしたいと思います。
血液型とは・・・①ヒト同種抗体によって特定されること。つまり、特異抗体との凝集反応で確認されること。②遺伝形質であること。つまり、親子間でMendelの法則に従って遺伝することが原則となります。また、血液型の抗原分子構造は、タンパク質・糖タンパク質・糖脂質のいずれかに分類されます。
血液型システム(系列)とは・・・同じ特徴(性質)を持つグループであり、上記に記載した①、②に加えて、③血液型抗原をコードする遺伝子が同定されていること、つまり、原因遺伝子の塩基配列が決定されていること、④染色体上の位置が特定されていること、⑤その遺伝子は既存の血液型遺伝子又は近接した相同体ではないことが要件となります。従って、新しい血液型として国際的に承認されるには、①~⑤の要件を満たす必要があるため、非常にハードルが高いと言えます。
36システムに存在する血液型抗原の数は、それぞれのシステムで異なり、Rhでは54抗原、MNSでは49抗原と抗原が多いシステムもあれば、H、Kx、I、Gill、JR、Lan、Vel等のように1つの抗原から成るシステムもあります。
36システムの抗原を高頻度抗原(殆どの人が抗原陽性:99%>)、低頻度(殆どの人が抗原陰性:<1%)、多型性(抗原が陽性と陰性が一定の頻度で存在する)の3つに分類した場合、約52%は高頻度抗原、35%が低頻度抗原、13%は多型性となります。人種内において、適度に陽性と陰性が存在する抗原(多型性)では、抗原陰性者へ抗原陽性の血液が輸血された際に抗体が産生される場合があります。妊娠によっても抗体が産生される場合もあります(母が陰性、子が抗原陽性の場合)。従って、通常、臨床上問題視されるのは多型性のある血液型抗原と言えます。勿論、高頻度抗原陰性の人が輸血又は妊娠によって高頻度抗原に対する抗体を保有する場合もあります。
また、血液型システムの要件を満たしていないが、一つの系列としてまとまっているグループをコレクション、殆どの人が抗原陽性(陰性の人が少ない)である血液型抗原を900シリーズ「高頻度抗原」、殆どの人は抗原が陰性で、抗原陽性の人は稀にしか存在しない抗原を200シリーズ「低頻度抗原」として分類されています。
これらコレクション、低頻度抗原、高頻度抗原に分類されている抗原においても、将来、分子生物学的な研究が進み、血液型システムの要件を満たせば、血液型システム(系列)の仲間入りすることになります。