血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#140:輸血検査のQ&A(ABOウラ検査が弱い、それって亜型の可能性ある?)

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ABO血液型は、オモテ検査とウラ検査が一致した場合のみ血液型が判定されます。定義はありませんが、通常の表現型では、オモテ検査は3+以上の凝集が、ウラ検査でも2+以上の凝集が観察されます。従って、逆を言えば、オモテ検査の2+以下、ウラ検査の1+以下は亜型等の疑い(可能性)がある、ということになります。全てが自動検査機器による客観的な判定であれば基準も設定しやすいのですが、試験管法で検査する場合、判定は担当者の目視判定になります。担当者間でも若干試験管の振り方も異なります(経験の差もある)。また、試薬と検体を試験管内で混和し、遠心するまでの時間や混和の状態でも凝集強度に差が出てきます。とくにABO判定は、IgM抗体による直接凝集反応を見ているため、弱い反応を呈する原因の一つはよく混ぜていないということがあります。このような施設間や検査担当者の背景を考慮した場合、「オモテ検査は3+以上、ウラ検査は2+以上」の反応があれば、通常の表現型として判定しても大きな問題になることはありません。とくにウラ検査はヒトの血漿(血清)中の抗体の反応を観察しているため、ちょっと強めに試験管を振ると凝集は崩れてしまいます。オモテ検査で使用している抗A、抗Bは、抗体価が1,000倍以上ありますが、ウラ検査で使用するヒトが保有する抗体(抗A、抗B)は、抗体価16〜32倍が中心となる正規分布を示すため、中には4〜8倍程度の抗体も存在します。4〜8倍程度の抗体を即時遠心判定すれば、1〜2+程度の凝集しか出ないことになります。

オモテ検査で抗A又は抗B試薬との反応が弱い場合や部分凝集が観察された場合は、亜型、血液型キメラ及び抗原減弱例などが推測されますが、ウラ検査が弱いことで亜型を推定するのは少し難しくなります。というのも、オモテ検査のように赤血球のA、B抗原が少ないとか、抗A、抗B試薬の背景に濁りを生じている、というように見た目で分かりやすいものではないからです。ウラ検査の反応が弱いのに、なぜ亜型を疑うのか?、慣れていない人には非常に難しく感じます。亜型だからウラ検査の反応(規則抗体)が弱いのではなく、亜型によって不規則性の抗A1又は抗Bを保有するためにウラ検査で弱い反応が観察される、が正しい言い方です。血漿(血清)中に存在する規則抗体の抗A、抗Bとは異なり、亜型個体が保有する不規則性の抗A1や抗Bは、一部の例外を除いて2+程度の凝集だからです。この反応強度は、通常の表現型で血漿(血清)中の規則抗体が少し弱い抗Aや抗Bによく似ています。そのため、迷いが生じてしまうのです。

具体的にウラ検査の反応が弱く亜型であった例は、以下のような例があります。不規則性の抗A1や抗Bの存在で一見、オモテ・ウラ一致にも見えますが、規則抗体としては凝集が弱いと考えて精査すると、こういった亜型に遭遇する場合もあります。しかし、このような反応を示しても99%以上は、ウラが弱いだけで終わります。従って、積極的に亜型検出のための精査は必要ありません。輸血を前提とする場合は、血漿(血清)中の抗A、抗Bの有無が重要です。

 

不規則性の抗B保有の亜型)

☑オモテA型、ウラA型?(A1血球:陰性、B型血球:2+)→A1Bel

☑オモテA型、ウラA型?(A1血球:陰性、B型血球:3+)→cisA1B3

☑オモテO型、ウラO型?(A1血球:4+、B型血球:2+)→Bel

 

不規則性の抗A1保有の亜型)

☑オモテO型、ウラO型?(A1血球:2+、B型血球:4+)→Ael

☑オモテB型、ウラB型?(A1血球:2+、B型血球:陰性)→AelB

 

【参考Blog】

・#096:ABOウラ検査の反応が弱い場合に想定すること!の(はてな?)

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/11/15/062623

 

・#130:ケーススタディー(Episode:30)オモテO型でウラ弱の際の考え方と解釈

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2021/05/13/074348