血液型検査のサポートBlog

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#120:ケーススタディー(Episode:20)A/O血液型キメラに類似した疾患によるA抗原減弱例

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 ABOオモテ検査を実施した際に、明瞭な凝集はあるものの、背景に濁りを生じる場合に、考えることは主に3つ、ABO亜型、血液型キメラ、疾患による抗原減弱です。その他にもO型の異型適合血液の輸血や造血幹細胞移植後などもありますが、日常的に遭遇するのは、疾患による抗原減弱が最も多いと考えられます。従って被検者が血液疾患の場合には、疾患による抗原減弱の可能性が高いと考えて検査を進めることになります。

疾患による抗原減弱例においても亜型同様に抗原量のバリエーションは様々です。一見、血液型キメラ様の反応を示すものやAのような亜型様の反応を示すものまであります。血液型キメラ、抗原減弱に共通する点は、抗原量が減少してもウラ検査では不規則性の抗A1や抗Bを保有しないという点です。また、キメラとの鑑別点の一つは、スライド法において、抗原減弱例では凝集開始時間が若干遅延すること、2分経過後にも凝集は一塊にならない(様々な抗原量が存在している)点が鑑別点の一つとなります。しかしながら、陽性集団の少ない血液型キメラの場合には、類似の反応が観察される場合もあります。従って、抗原減弱と決定するには、患者情報が欠かせないことになります。

今回の①症例は急性骨髄性白血病(AML)の検体、②症例は骨髄異形成症候群(MDS)の検体です。FCMのヒストグラムパターンにおいても一見、二峰性に見えますが、陰性と陽性の中間にも少ないながら抗原量の異なる集団が存在しています。対照の緑のA型と同じピークの集団が凝集を起こしている集団です。②症例の微細な凝集が、陰性と陽性の中間にある集団となります。

 

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 これらの血清学検査(精査)における鑑別ポイントは、赤血球側の検査で抗Aレクチン(ドリコスレクチン)と陰性ではない点です。通常、A、Aなどの場合は、抗Aレクチンの反応は陰性になります(抗原量が極度に低下すれば抗原減弱例でも陰性となる)。また、抗Hレクチン(Ulexレクチン)との反応においても、A亜型の場合は、A抗原を欠いているため土台のH抗原が露出し、抗Aレクチンとの反応は3+以上(通常4+)の反応を示します。まずは、この点がA等の亜型ではない可能性を示唆する点となります。また、血漿(血清)側では、ウラ検査で不規則性の抗Aは認められないこと、血漿中のA転移酵素が通常A型と比べて若干弱いながら検出されることです(通常のA、Aなどでは通常認めない)。唾液検査では、分泌型であれば通常のA型と同程度の型物質が検出されます(A亜型ではA物質の量が少なくなる)。このような血清学的な反応を示し、被検者が血液疾患であれば、後天的な疾患によるABH抗原の減弱の可能性が高いということになります。輸血の対応は、ウラ検査はA型(抗Bのみ保有)で問題ないため、A型患者と同じ対応となります。このような患者さんの場合、過去の検査履歴も判定の一助となります。また、治療中に抗原量も多少変化することもあります。従って、定期的に検査が実施できる場合は、経時的な観察も重要です。

 

【関連Blog】

・#112:ケーススタディー(Episode:12)血液型キメラ(B/O)に類似したB抗原減弱例↓↓↓

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2021/02/04/051257

 

・#113:ケーススタディー(Episode:13)血液疾患による典型的なB抗原減弱例↓↓↓

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2021/02/08/053735