血液型検査のサポートBlog

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#118:ケーススタディー(Episode:18)A型とO型の血液型キメラの特徴

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 血液型キメラとは、同一個体内に異なった遺伝情報を持つ細胞が混在していること、つまり2種類の接合子(zygote)が存在している状態をいいます。例えばA型とO型の血液型キメラの例では、抗A試薬に陽性(4+)(抗B試薬は陰性)を示します。スライド法などで観察すると、抗A試薬の背景に濁りを生じています。これは抗A試薬と反応しない赤血球が混在していることを示唆するものです。また、試験管法で判定する場合、凝集部は通常のA型と同様に試験管の底から剥がれ、非凝集部はO型同様に試験管底に赤血球が残っている様子が観察されるのが特徴です。スライド法による観察は、凝集開始時間、背景の濁りを確認するのに適しています。それは、血液型キメラは通常の表現型同士の混在であるため、凝集開始時間は亜型等に比べて早いのが特徴です。しかし、凝集集団の混合割合が少なくなると、疾患等による後天的な抗原減弱例やA、B以下の亜型との判別が難しくなる場合もあります。抗A又は抗B試薬と「一塊の凝集を呈し背景が濁る」といった典型的な血液型キメラは、凝集部の割合が40~50%程度以上の場合です。

 今回の3例は、A型とO型の混合割合が、①1:9、②5:5、③7:3を例にしています。②~③のキメラが典型的なキメラであり、②は疾患に伴う抗原減弱例も示唆されるような凝集像です。一方、①のようにA型の混合割合が1~2割の場合は、凝集塊が一つの塊にはならないため、Aなどの亜型と勘違いする場合もあります。FCM解析を実施すれば血液型キメラであることがわかりますが、通常実施している血清学的な精査ではこれらをキメラと判定するには、亜型、抗原減弱、キメラの特徴を踏まえて判定する必要があります。

 

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 A型とO型の血液型キメラの血清学的検査では、赤血球側は、抗A試薬及び抗Aレクチン(ドリコスレクチン)と部分凝集が観察されます。抗Hレクチン(Ulexレクチン)とは、O型の混合率で若干変わりますが、O型が混在しているため、通常のA型よりも強い反応を示します。また、抗A試薬をPBS(又は生理食塩液)で2倍連続希釈して被凝集価測定した際、通常のA型と同等の被凝集価になったとしても、全体に部分凝集を認めたり、背景に濁りを生じたりします。一方、血漿(血清)側の反応は、ウラ検査では通常のA型(抗Bのみ保有)し、低温下においても不規則性の抗Aなどは保有しません。また、血漿中の転移酵素はA転移酵素のみ認められます。A転移酵素が認められるということは、亜型(ABO遺伝子のエキソン6,7領域の変異はなし)とは異なるという解釈ができます。

血清学的な検査結果から、亜型はある程度否定できますが、疾患に伴うA抗原減弱例の可能性があるため患者情報を収集し否定しなければなりません。また、双生児の有無、O型異型適合血液の輸血、造血幹細胞移植の有無の可能性は低いとしても否定しておく必要があります。

 

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