不規則抗体同定用パネル赤血球との反応性において、凝集の強弱は複数抗体の存在や個々の赤血球抗原量にバラツキがある抗原に対する抗体が存在していることを示唆します。とくに間接抗グロブリン試験(IAT)でのみ反応する場合は、ホモ・ヘテロ接合赤血球で強弱を認める抗Fyb、抗Jka、抗Jkbや赤血球間で抗原量にバラツキがあるため凝集に強弱を認める抗Xgaはマークしなければならない抗体です。Rh系の抗体が混在する際には、多くの例ではブロメリン法で反応が観察されますので、IATのみ反応し、凝集に強弱があるというのは逆に抗体を絞り込むための有用な情報となります。とくにw+から3+程度までの強弱がある場合、主要な血液型抗原に対する単一特異性だとすれば、まず抗Xgaを疑い検査を進めるべきです。
Xgaをコードする遺伝子はX染色体上にあり、Xg(a+)は男性の場合Xga/Y、女性の場合Xga/X又はXga/ Xgaであるため女性の方が抗原陽性率は高く、逆にXg(a-)は男性の方が女性よりも多い特徴があります。Xga抗原にはこのような背景があるため抗原量にバラツキがあります。また、Xga抗原はficin等の酵素処理によって抗原が破壊されるため、Xg(a+)赤血球を酵素処理したIATでは陰性化します。抗Xgaを同定する際には、まずは強く反応する赤血球を見つけること、そしてその赤血球を酵素処理して反応が陰性化することを確認することです。勿論、陰性となった反応のパネル赤血球で否定出来る抗体は否定することは前提です。
今回の例では、Xga抗原が陰性のP11,P12,P13のパネル赤血球で、最初のパネルで否定出来なかった抗Fyb、抗Jkb、抗M、抗Sは否定されました。また、平行してficin処理赤血球との反応で陰性化したことから、抗Xgaの特異性が確認されました。このあとすべきことは、本人のXga抗原が陰性であることを確認出来れば、抗体同定は終了となります。
日本人のXga抗原の陽性率は、男性で約7割、女性で約9割であり、殆どが陽性なので、仮に最初の段階で主な血液型抗原タイピング検査が出来て、Xg(a-)であることが判明していたら、パネル赤血球の強弱(P5パネルとの陰性~w+とP6パネルの3+)から、抗Xgaはある程度想定内ということになります。
【関連blog】
・#018:不規則抗体の絞り込みの(はてな?)
https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/02/07/053851