血液型検査のサポートBlog

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#103:ケーススタディー(Episode:03)Sal法~IATで反応し血漿で中和される(抗Lewis)

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 不規則抗体同定用パネル赤血球との反応を観察した際、殆どの赤血球と陽性になる原因は、①複数抗体の混在、②高頻度抗原に対する抗体、③抗赤血球自己抗体、④抗CD38抗体製剤(DARA等)投与患者、④抗体価が高い冷式抗体(抗I、抗HIなど)などが考えられます。患者情報と自己対照赤血球が陰性であることから、③と④はほぼ否定されます。仮に、この抗体が高頻度抗原に対する抗体であれば、この反応の強さからどちらかと言えば、HTLA抗体(抗Jra、抗JMH、抗KANNO、抗Ch/Rg、抗Knopsなど)が考えられます。そして凝集のバラツキ具合から抗Ch/Rg、抗Knopsなどの可能性も考えられますが、60分加温-IATの反応が弱いことから、②の可能性も低いと考えられます。妊娠歴があることから抗Jraも考えられるところですが、LISS-IATで3本陰性であることから、ほぼ無いと考えられます。そう考えると、この抗体は主な血液型抗原に対する抗体が複数存在している可能性がありますが、ブロードに反応していること、凝集強度が強くないことから、こういった反応を示す場合は、まずは低温反応性の抗体をLISS-IATやPEG-IATで持ち越ししていないかを確認することが解決の糸口となります。被検者の血液型の情報がないため、血漿(血清)側の反応からアプローチするしかありません。

 

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 Sal法の22℃(室温)の反応を観察したところ、2+~4+と反応が強くなっています。そして、このように強い反応がある中での陰性は、確実に陰性であると考えられます。つまり、P5の赤血球とは反応しない抗体であるということです(全体的に1+程度の反応を示した際の陰性は、真の陰性なのか抗原量が少ないために見かけ上陰性なのかの判断が出来ません)。Sal(室温)レベルで強い反応を示し、Sal法(37℃)やLISS-IAT、PEG-IATで弱陽性になるような抗体といえば、抗Lewis関連であることが推測されます。陰性となったP5の赤血球はLe(a-b-)であること、Le(a-b-)の個体は自然抗体として抗Leaと抗Lebを保有することがあります。どちらかと言えば抗Lebは室温レベルで強く反応し、抗Leaは室温、37℃、IATで反応する性質がありますので、そのことを知っていれば、ある程度予測ができます(勿論、IATのみ反応する抗Leaは存在します)。

 この例では、室温レベルでは抗Leaと抗Lebの両方が反応しているため、37℃に加温し、抗Lebの反応性を落とすことで、抗Leaの特異性が確認できるようになります。さらに抗Lewis以外の抗体の混在を確認するには、Le(a-b-)で異なった表現型赤血球との反応を確認する必要があります。しかし、Le(a-b-)の頻度が低いことからそれは容易なことではありません。そういう場合は、抗Lewisの性質を活用し、2系列の試験管に被検者血漿を2滴ずつ入れて、その後、1列目にはLe(a-b+)個体の血漿を、2列目にはLe(a+b-)個体の血漿をそれぞれ2滴ずつ加えて30分程度放置し、パネル赤血球を加えて反応を観察します。Lewis抗原は血漿中にも型物質が存在するため、抗LeaはLe(a+b-)血漿で抗体が中和され、抗LebはLe(a-b+)血漿で中和されます。

 Lewis抗体の厄介なところは、Lewis抗原量にバラツキがあるため、Rh系などの抗体のように反応が一定しないことです。3+以上の強い抗体であれば、ある程度反応パターンになりますが、抗体が弱い場合は抗原量が多い赤血球とのみ凝集が観察されるため、パターン通りに行きません。また、被検者のタイピングでLe(a-b-)型と事前に分かった場合は、抗Lewisの存在はある程度予測しておくべきです。また、抗Leaの中にはIgG性の抗体も一部存在する場合もありますが、新生児のLewis抗原は未発達でLe(a-b-)であることから新生児溶血性疾患の原因抗体とはなりませんので児への影響はありません。但し、抗Lewis以外の他の抗体については妊娠中はマークする必要があります。

 

【関連blog】

・#087:Le(a+b-)型血漿による抗Leaの凝集抑制の(はてな?)↓↓↓

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/10/02/054125

 

・#040:抗Jra保有者はなぜ女性に多い!の(はてな?)↓↓↓

https://www.bloodgroup-tech.work/entry/2020/04/11/063344