ABO血液型はオモテ・ウラ検査のロジックで判定することから、オモテ・ウラ不一致の場合やウラ検査の凝集態度が弱い場合には亜型を考慮する必要があり、ABO血液型判定を躊躇する場合があります。今回はオモテB型でウラ検査の抗Aが弱い場合に考えること!の(はてな?)についてシェアしたいと思います。
オモテ検査がB型で、ウラ検査(A1血球:1+~2+、B血球陰性)で抗Aが弱い場合、規則抗体の抗Aが弱いB型というのが殆どです。規則抗体の抗A、抗Bには個体差もあり、新生児、高齢者及び病的ではない個体においても、ウラ検査が弱いことがあります。しかし、まれにこれらの中に亜型の可能性やB(A)と呼ばれる表現型が含まれていることがあります。このようなケースでは、ウラ検査を判定した際に、「不規則性の抗A」なのか、又は「ウラが弱い」のかを鑑別しなければなりません。
不規則性の抗Aと考えた場合は、この被検者はAB型の亜型の可能性があるいうことになります。従って、再度、抗A試薬に微弱な凝集が観察されないかを確認する必要があります。微弱な凝集があるケースで血清中に抗A1を保有するとなれば、A3B又はAxB等が考えられます。オモテ検査で一度はB型判定を行っていることから、A3BだとすればA3Bの中でもかなりA抗原量が低いタイプであることが推測されます。従って、スライド法などでは凝集開始時間が遅延するため、最低2分間は観察することが大切です。このようなケースでドリコスレクチン(抗A1レクチン)を用いて検査を行っても、あまり意味がないことはいうまでもありません(これだけA抗原が弱いのであれば陰性は想定内だからです)。ドリコスレクチン(抗A1レクチン)が有用なのは、抗A試薬と3+~4+を示す場合に、A1なのかA1以外なのかを鑑別するために行います。仮に、抗A試薬による再検又は時間を置いた判定で凝集が観察される場合は、A抗原が少ない亜型の可能性があるため、抗A試薬による吸着解離試験や血清中のA1赤血球との反応が抗A1であることを確認するため、A型分泌型唾液による凝集抑制試験などを行う必要があります。このようなケースでは時々、一見、抗A1に見えた抗体は冷式抗体の抗AI(抗Iの仲間)であることがあるため、A型分泌型唾液による抑制試験や抗体の反応温度領域を確認することが重要です。
また、「不規則性の抗A(抗A1)」と考えた場合に注意すべきことは、即時判定でどの程度の強さの凝集であるかということです。例えば、ウラ検査の即時判定において、2+程度の凝集が出たとすれば、結構強い不規則性の抗A1ということになります。室温に15分程度静置後の判定や4℃で10分程度静置後の判定であれば納得しますが、即時判定で不規則性の抗A1又は不規則性の抗Bが2+以上の凝集を示すのは、シス型(cisA2B、cisA1B3又はcisA2B3)が保有する抗A1又は抗B、A3Bのごく一部のみが保有する抗A1くらいです。通常検出される多くのA2、A3、A2B、A3Bが保有する不規則性の抗A1は、室温又は4℃で10分程度静置して1+~2+程度の凝集です。即時判定で2+以上の凝集が出た時は、何か変?という感覚が必要です。
では、今回のようにオモテB型、ウラの抗Aが弱い反応で考えることは・・・可能性的にはB(A)です。B(A)は、本質的にはB型ですが、一部のモノクロ抗Aや動免抗Aと微弱な反応を示すもので、その遺伝子背景としてA110(Ael02)、R102(ABO*O.09.01)、R103(ABO*O.09.02)のアリルとB遺伝子がヘテロ接合した際に、B(A)表現型となります。これらのアリルを保有した場合、ウラ検査の抗Aが弱くなる傾向があります。また、B(A)は使用するモノクローナル抗体全てと陽性になる訳ではなく、一部の抗A試薬と凝集が観察されますので、使用する試薬が反応するものであれば、オモテ検査はA3B又はAxBのように見えてきます。一方、反応しない抗A試薬を使っている場合にはウラが弱いB型ということで、判定保留になります。B(A)に関する記事は、「#009:B(A)血液型の(はてな?)」をご覧下さい。
オモテがB型でウラが弱い反応を示した一つの例を[SL.1、SL.2]に示しましたが、ここでのポイントは、ウラ検査の弱い反応が不規則性の抗Aと考えるなら、即時判定で2+程度に反応するのは、少し変?ということに気がつけば、B(A)の可能性に気がつくと思います。一部のモノクロ抗Aや動免抗Aと反応することでAxBの可能性も示唆されますが、その鑑別は、人由来抗Aによる吸着解離試験で鑑別を行います。