血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#094:唾液検査でABO型が判定出来ない場合は爪を用いる!の(はてな?)

 抗A又は抗B試薬と直接凝集反応を呈さない亜型(Bm、A1Bm、Ael、Belなど)の場合、吸着解離試験を行い赤血球上に微量に存在する抗原の有無を調べて血液型を決定します。しかし、使用する試薬の問題もあり、予想した結果が得られない場合や非特異反応によって必ずしも正しい結果が得られない場合があります。そこで、赤血球以外の試料を用いてABO型の確認を行う場合があります。その代表的な試料として唾液が用いられます。しかし、非分泌型個体では型物質を検出できない場合もあります。ここでは、唾液検査でABO型が判定出来ない場合は爪を用いる!の(はてな?)についてシェアしたいと思います。

 ヒト唾液中には赤血球のABO血液型と同じ型物質が存在しますが、唾液中に含まれるABH型物質は、①亜型個体では少なくなること、②唾液中の型物質量には個体差があること、③分泌型・非分泌型でも型物質量は異なることは、「#093:ABO亜型個体の唾液中のA,B型物質量の(はてな?)」でシェアしました。

 日常検査で唾液を用いて検査する多くは、亜型を疑ったケースです。従って、通常の表現型に比べて唾液中の型物質が少ない試料で検査を行うということになります。このようなケースでは、始めにLewis血液型(表現型)を検査し、被検者が分泌型か非分泌型かを知っておくことは検査結果を解釈する上で重要です。Le(a-b+)であれば分泌型、Le(a+b-)であれば非分泌型、Le(a-b-)の場合はどちらか分かりません。A3、B3以下の亜型では、非分泌型の場合に唾液から型物質を証明することは難しくなります。従って、唾液以外の体細胞試料を用いて検査を進めることになりますが、侵襲を伴わず、簡便に採取可能であるのが「爪」です。爪を用いたABO型の検査の詳細については、「#005:爪を用いたABO型判定の(はてな?)」をご覧下さい。

[SL.1]には、44例の亜型個体から得られた爪を用いてABO型を判定した結果を示しています。44例中42例は爪によるABO型判定が可能でした。残りの2例(A1B3、A3B)だけは、唾液でも爪でもABO型判定ができませんでした。おそらくこのタイプは、se/seの非分泌型の可能性が高いと考えられます。また、[SL.2]には、唾液では型物質が証明できず、爪を用いた検査によってABO型を判定できた例です。殆どがLe(a+b-)の非分泌型個体であり、やはり亜型で非分泌型の場合は、唾液から型物質を証明することが難しいことが示唆されます

 ABO血液型判定において、とくにオモテ・ウラ検査が不一致で抗A又は抗B試薬と直接凝集を示さない亜型のケースでは、血液以外の唾液又は爪などの体細胞試料を用いてABO型を検査することは、亜型を決定する上では重要です。爪を用いた検査では、唾液を用いた検査のように型物質量の多い少ないを判別することは出来ませんが、非分泌型個体においても殆どの例でABO型を判別出来るメリットがあります。

 

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