血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#028:ABOウラ検査の予期せぬ反応の(はてな?)

 ABO血液型の判定には、「オモテ検査」と「ウラ検査」があります。ウラ検査は被検者血漿(血清)中の抗A、抗Bを検出する検査ですが、オモテ検査から予想される結果とウラ検査の結果が異なる場合があります。ここでは、ABOウラ検査の予期せぬ反応についてシェアしたいと思います。

 日常検査で遭遇するウラ検査の予期せぬ反応で多いのは、予想していた規則抗体の反応が弱い又は出ない例や余分な反応が出てしまう例でウラ検査の判定を保留とし、ABO血液型が決定できないケースが殆どです。ABO血液型の確定は、オモテ・ウラ検査結果が一致した場合のみ血液型を確定できるため、オモテ・ウラのどちらかが保留となればABO血液型を確定できません。余分な反応が出てしまう例の多くは不規則抗体が関与していますので、ここでは反応が弱い場合についてシェアしたいと思います。

 ウラ検査が弱い反応は何を意味するのか?・・・ウラ検査で反応が弱い多くの例は、オモテがA型、ウラのB型赤血球との反応が2+又はそれ以下の場合です。B型赤血球との反応を規則抗体の抗Bと考えれば、オモテ・ウラ一致のA型となります。しかし、通常は3+~4+出ることから、1+~2+では反応が弱いと感じてしまうのが当然です。ウラ検査の凝集強度において、陽性と判定するための凝集強度について明確な基準がないのも迷う原因となっています。

 ここで、ウラ検査についておさらいです。ABO血液型判定(試験管法)では、2本の試験管に被検者血漿(血清)を2滴ずつ分注し、一方へ既知のA1型赤血球をもう一方へB型赤血球を入れて、軽く混和後に直ぐに遠心判定します。これが通常の検査方法であり、普通はこの方法でも3+以上の凝集が観察されます。注意点は、ヒト血漿(血清)を使用するため、個々の検体で抗体価(規則抗体の抗A、抗B抗体価)が異なるということ、即時判定で3+以上の凝集を呈する場合は、抗体価が8倍程度必要であること(通常のヒト血清中の抗A、抗B抗体価は16~32倍をピークとした正規分布を示す)、遠心まで直ぐに行うため血漿(血清)と赤血球が良く混ざっていないことがある、これらのことはウラ検査を実施する際に理解しておく必要があります。1歳未満の子供、高齢者等では抗体価が低いのは想定内となります。その場合は、試験管をよく攪拌し、遠心判定までの時間を少しおいてから遠心する工夫も必要です(可能な限り、抗原抗体反応を促進させる)[図.1]。成人の場合でも対応は同じです。健常人を数千検体調べた結果、A型でウラの抗Bが弱い例(血漿中抗Bの反応が弱い)が圧倒的に多い結果となっています。

 オモテがA型でウラ検査の反応(B型赤血球)が1+~2+程度の場合には、考えられることは2つあります。①もともと抗B抗体価が弱い(殆どの例がこれ)、②上記の例でいうとA1Bel型等の亜型(A1Bel型はオモテはA型と判定される)で、ウラ検査の1+~2+の反応は、不規則性の抗Bである可能性があります(但し、この例は極めて低い)。この場合は、抗Bによる吸着解離をはじめとした亜型精査を実施しなければ亜型である確定ができません。それまで輸血の必要になったら?・・院内の取り決めで血液型が判定できない場合はO型赤血球を使用する決まりであればO型赤血球を使用するのが良いと思います。但し、この検体が仮にA1Bel型で、不規則抗体の抗Bを保有し、その抗Bは37℃で反応する場合、亜型精査後であっても輸血用血液はA型しか選べないことになります。最初の検査でオモテ検査A型、ウラ検査でB型赤血球と2+程度で、A型とは判定せず、あえて判定保留とした検体は亜型ではあったが、結局輸血はA型となるということです。

 つまり、本来の血液型を決めたからといって、本来の血液型の血液を輸血できない場合があるということです。輸血用血液製剤の選択は、血漿(血清)中の抗A、抗Bの有無で決定されるということを再認識すれば、至急の際に何を優先させるかが明確になると思います。因みに、cisA2B3という亜型では、不規則性の抗Bを保有するため、本来の血液型はAB型ですが、輸血はA型又はO型の選択となります[図.2]。

オモテA型でウラ検査の抗Bが弱い、オモテO型でウラ検査の抗Aが弱いのは、日常的に比較的多く遭遇する(ある一定頻度で出てくる)事例であることを知っておくと、慌てずに対処できるかもしれません。

 

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