血液型検査のサポートBlog

血液型検査(輸血検査)で生じる悩みや疑問(はてな?)をサポートする医療従事者向けのBlogです。

#026:PolyagglutinationとAcquired B(後天性B)の(はてな?)

 Polyagglutination(汎凝集反応)とは、細菌や感染症を伴う患者赤血球が、ヒト血漿(血清)と血液型とは無関係に凝集する現象です。ここでは、PolyagglutinationとAcquired B(後天性B)の(はてな?)についてシェアしたいと思います。

  Polyagglutinationとは、細菌などの酵素によって赤血球表面のシアル酸が切断され、潜在性のT抗原が露出し、成人のあらゆる血漿(血清)と凝集反応を起こすことです。成人の血漿(血清)中には、これらのT抗原と反応する抗T抗体が正常抗体(抗Aや抗B抗体など)と同様に存在しています。そのためpolyagglutinationを呈している患者の場合、あらゆる人(ABO型が同じでも)の血漿成分においても凝集を呈します(但し、臍帯血漿とは反応しません)。これまでpolyagglutinationを呈する患者に血漿成分を輸血し、アナフィラキシー症状を起こした例が若干報告されています。

 Polyagglutinationと気づくには・・・通常は交差適合試験の副試験(患者赤血球+セグメント血漿の反応)の食塩液法で凝集が観察され、患者がPolyagglutinationを呈していることに気が付くことが多いのが特徴です。その他、積極的に検出する方法としてはレクチンを用いて検出する方法がありますが、レクチンの種類によって検出できる、できないタイプがあります。Polyagglutinationの代表的なタイプとしては、T、Tn、Tk、Acq.Bなどがあります。ヒト血漿(血清)は、これら全てに反応しますが、レクチンを用いて検査した場合は、ピーナツレクチンではTnとは反応せず、大豆レクチンではTkとは反応しません。また、Acq.B(後天性B)とはいずれも反応しません。従って、ヒト血漿(血清)が漏れなく検出できる唯一の方法ということになります。

Acquired B(後天性B)とは・・・A型の抗原決定基(N-アセチルガラクトサミン)に、細菌の酵素が作用するとアセチル基が切られると、ガラクトサミンになりますが、これがB抗原決定基とみなされ(実際のB型の抗原決定基はガラクトース)、動物免疫抗Bやヒト由来抗Bと反応し、A型の人がAB型のように観察される現象です。本来の血液型はA型のため、血漿(血清)中には抗Bのみ保有しています。つまり赤血球輸血が必要な場合は、A型血液の選択になります。しかし、血小板輸血やFFPを輸血する場合は注意が必要である。それは、ヒト血漿中には抗Tや抗Tk、抗n、抗Acq.Bに特異的な抗体を規則抗体として保有しているため、稀にアナフィラキシー様の反応を呈する場合があるためです。但し、そのような症状を呈するのは、高力価の抗体(抗T)を保有する血漿を輸血した場合です。検討的に健常人の抗T抗体価の分布を調べた結果を下記に示します。年齢が高くなるに伴い抗T抗体価も低下する傾向があります。また、Acquired B(後天性B)を呈している患者の場合、同時に菌血症や敗血症といった細菌等の感染状態にあることが多く、患者の赤血球がpolyagglutinationも呈していることがあります。特に小児の肺炎球菌によるT化はよく知られています。Acquired B(後天性B)は、上記理由からヒト由来抗A、抗B(現在市販されていない)とは反応しますが、現在使用されているモノクローナル抗A、抗B試薬とは殆ど反応しないため、臨床現場で遭遇することは稀です。また、Acquired B(後天性B)は、以上の理由からA抗原を持つ個体しか起こりません。B型やO型個体でAcquired B(後天性B)になることはありません。

 

【reacetylation】
Acquired B(後天性B)は、A型のアセチル基に細菌の酵素が作用してAB様(抗Bとの反応は通常よりも弱い)になるため、鑑別にはreacetylationにより元(A型)に戻すことです。またこの方法でA型になれば、acquired B(後天性B)の鑑別にもなります。
(1)100μLの洗浄赤血球に、pH8.5リン酸緩衝液1.5mLを加える。
(2)振とうさせながら5μLの無水酢酸を加え室温に3分間放置する。
(3)1N NaOHでpH7.0に調製する。(pH7.3 リン酸緩衝液を加えて調整も可能)
(4)赤血球をPBSで4~5回洗浄する。
(5)元の赤血球を対照にして抗Bとの反応をみる。

 

 

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