血液型検査のサポートBlog

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#009:B(A)血液型の(はてな?)

 B(A)とは、本質的にはB型ですが、一部のモノクローナル抗Aや動物免疫抗Aと微弱な凝集を認めるB型についた呼び名である。同様の反応を認めるAB型の亜型であるAxB(本質的にはAB型)との鑑別が重要となる。ここでは、B(A)血液型についてシェアしたいと思います。

 B型の中には、マウス由来のモノクローナル抗A(現在市販されている多くの試薬)又は動物免疫抗Aと弱く反応するB(A)という表現型があります。抗Aとの反応は非常に弱く、一部のモノクローナル抗Aにだけ反応するものもあります[図1、2]。また、その凝集強度は脆く、試験管法で凝集を観察している間に崩れてしまう特徴があります。そのため、スライド法よりも試験管法で検出されます(通常の亜型はスライド法でも観察される)。この個体の血清側の規則抗体は、B型同様に抗Aのみを保有し、不規則抗体の抗A1は保有しません。また、転移酵素活性はB型のみ認められます。唾液中の型物質もB型のみ存在します。さらに、ヒト由来抗Aを用いた吸着解離試験では抗Aが解離されないことからAxB等の亜型とは異なります。規則抗体の抗Aが通常のB型と比べて少し弱いことがあるため、ウラ検査でA型赤血球との反応が弱いB型として検出され、精査の結果、B(A)であることが分かる場合が多いが殆どです。

B(A)となる要因には、いくつかの説があります。

  • B転移酵素活性が強い場合:ABO遺伝子型がB/Bの場合、B/OよりもB転移酵素活性が高くなります。B転移酵素活性は弱いながらもA転移酵素のドナー基質であるN-アセチルガラクトサミンをH物質に付加する活性があります。その作用によって、少量のA抗原が生じ、一部のモノクローナル抗Aと反応すると考えられます。
  • B(A)遺伝子によるもの:コードする転移酵素がAとBの両方の活性をもつ遺伝子によるもの。むしろシスABに近い性質であると考えられます。日本人では報告例がありません。
  • 一部の特定のA遺伝子又はグアニンを欠失しないO遺伝子によるもの:B遺伝子とヘテロ接合になった場合にのみB(A)になることが報告されており、これは日本人に多いタイプです。対応する遺伝子として、A110(Ael02)R102(ABO*O.09.01)、R103(ABO*O.09.02)が同定されています。

 検討的に、B型献血者9,314件について動免抗Aによるスクリーニング検査(試験管法)を行い、16例のB(A)を検出しました。この16例はすべてヒト由来抗Aによる吸着解離試験が陰性であり、AxB(亜型)は否定されました。16例の血漿中のA、B転移酵素活性を測定したところ、B転移酵素活性のみが観察されました。16例の中にB型転移酵素活性が通常のB型よりも高い検体が7例存在しました。B型転移酵素活性が高い7例の血漿が、本来転移するガラクトース以外にもN-アセチルガラクトサミンをO型赤血球に転移するかをガルサーブABで確認したところ、転換後の赤血球は動免抗Aのみに凝集が観察されましたが、ヒト由来抗Aでは反応が認められませんでした。このことはB型転移酵素活性が強い場合、ある程度のA抗原を生じる可能性が示唆されたことになります。

次に血清学的検査でB(A)と判定した16検体の遺伝子解析を行ったところ、通常のB型が9例で、そのうちB/B型が7例と高率に含まれていました。残り7例中4例からR102が検出されました。

 その後、検討的に血清学的にB(A)と判定した67例の検体を遺伝子解析した結果、R102が67%、A110が24%、R103が1%の割合で検出されました。その他、B/B型が4%でした(残りはそれ以外)。特にR102A110はオモテ検査がB型でウラ検査の抗Aが弱いことで気が付くことが多い特徴があります。A110(Ael02)はO遺伝子とヘテロ接合(A110/O)の場合は、表現型がO型(稀にAelと判定される場合もある)になりますが、ウラ検査で抗Aが弱い特徴があります。A110/Bになった時だけB(A)になる(少量のA抗原を生じる)奇妙な遺伝子です。日常検査において、オモテB型、ウラ検査でA型赤血球と弱い(1+程度)の場合は、AxBの亜型の可能性も示唆されますが、B(A)も疑ってみることも重要です。B(A)の存在を知らなければ、疑うこともないため、今回はB(A)についてシェアしました。B(A)は通常のB型として扱います。勿論、輸血の対応もB型です。

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[図.1]抗A(A社Moの反応):1+程度の凝集は振っているうちになくなる(凝集は通常の亜型とは異なり、非常に脆く直ぐに崩れてしまう)。 

[図.2]A社Moと動物免疫抗A(1,2)のみ凝集が認められ、B社~E社Moでは陰性となる。